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03.この物語は、件の島へ妻と渡り三年の月日を『御片稚児』として過ごした神職傍系の婿殿と、その躾役を

 この物語は、件の島へ妻と渡り三年の月日を『御片稚児(おかたちご)』として過ごした神職傍系の婿殿と、その躾役をしていた男から聞き取った話を元に書き起こしている。  『御片稚児』の役目を放免されたあとの婿殿は、妻と離婚して本土へ戻ったらしい。  今では全く違う地方都市で、御片稚児の躾役だった男と共に暮らしている。  躾役の男も妻帯者だったが駆け落ちのように出奔した。  躾役の男の談によると、これはまた別のある地方都市で偶然に一度だけ当代神職に出会ったことがあるそうだ。  神職と共に失踪時した男とは既に死に別れてしまっていたが、彼は今でも美しかった。  既に三十路に差し掛かっているはずなのだが、成長を止めたのでは? と思えるほど姿も容姿も十代の娘のよう若々しかったらしい。  これも神の加護だろうか?  神職が失踪当時から女装をし続けているのは、今もなお島の人間に連れ戻されることを恐れているから。  どこから見ても完璧な女性に見えるのだが、実際は今でも男性の身体のままらしい。  それでもおそらくペニスは卑小化したままだろう。  彼は離婚せぬまま新妻を置いて出奔してしまったが、いくら年月は経っても島としては当代神職を失踪届で死亡認定させる訳にもいかないため『書類上では未だに既婚者』ではあるのだが、今では外国人のパートナー男性と愛犬と共に幸せに暮らしているのだと、左手の薬指に光る指輪を見せてくれたのだという。  当代神職も御片稚児(おかたちご)の躾役の男も、 「島を離れたものだけが幸せな人生を送れる」  という考えは同じなのらしい。

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