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第3章 逢引1※
「ヒロ、最近ここへ来ることが多いわね」
シスターメアリーの何気ない一言に内心、俺はドキッとしながら笑みを浮かべ、調理場への野菜運びを手伝う。
「そうでしょうか?」
「ええ、気づいてなかった? あなた、毎日のように、ここへ来ているわよ」
「メアリーさん、それって――俺がここに来ると迷惑ってこと?」
すると彼女は首を左右に振った。
「いいえ! そんなことないわ。こうやって、お仕事を手伝ってもらって、わたしも、神父様も助かっているもの。子どもたちは、あなたが来て遊んでもらえるのを楽しみにしているわ。何よりカイトが以前のように笑顔を見せてくれるし、元気な姿を見せてくれるようになった」と彼女は、まなじりを下げる。
まるで天使のように純粋無垢な笑みだ。
俺たちが|ナ《・》|ニ《・》をやっているか彼女は知らない。だから清廉な百合のような花のように清らかな笑顔を浮かべるのだ。
俺とカイトが大罪を犯していると知ったら、きっと、彼女は悪魔や魔物と遭遇したときのような顔をして、二度と微笑みかけてくれなくなるだろう。
「近頃は山で魔族が姿を表して人を殺害することもないし、獣たちが畑を荒らしたり、人を食らうこともないもの。いい事づくめだわ。これもきっと神のご加護のおかげだわ」
「ええ、そうですね。……もしもメアリーさんに『邪魔だからここへ来るな』って言われたら、どうしようって思いましたよ!」
「まあ、そんなことを言うわけないでしょ! まじめに仕事をして教会の手伝いもしてくれる、あなたにそんなことを言ったら神の裁きが下されるわ」
「それは怖いな」
じゃがいもの入った袋と玉ねぎの入った袋を、それぞれ台の上に置き、愛想笑いを浮かべる。
嘘はひとつもついてない。それでも、どこか後ろめたさを感じてしまうのは、俺とカイトの関係が許されないものだからだろうか? 罪悪感をひしひしと感じる。
――それでも、もう止められないこともわかっていた。
ほしいものは、たったひとつだけ。それが得られるなら、ほかのことなんて、どうでもいい。
良心の|呵責《かしゃく》により身動きできなくなってしまう前に俺は、顔を上げ、その場を退散する。「それじゃあカイトのところへいってきますね」と彼女に声をかけるのも忘れない。
「ええ、ありがとう。カイトなら厩で馬のブラッシングをしていると思うわ」
「わかりました」
返事をして全速力で外へ向かう。
朝から夕方まで畑仕事をして、その後は、シスターメアリーの手伝いをして、子どもたちの遊び相手となったり、面倒を見る。日が暮れたら家に帰らなくてはいけない。
思った以上にカイトとふたりきりでいられる時間は限られている。
だから少しでも長く、あいつのそばにいたいんだ。
ガムシャラに足を動かし、素早く手を前後に振り、厩に到着する。
息を整えながら、中へ入り、カイトの姿をさがす。
カイトは教会で飼っている馬たちの毛並みを整えるため、ブラッシングをしていた。
おとなしい性格をした馬は車椅子に乗ったカイトがブラシを掛けやすいよう、身をかがめていた。
「いい子だね、きれいになったよ。これで終わり」
まるで「ありがとう」と礼でも言うように、栗毛色の馬がブルルといななく。
ブラシをひざの上に載せ、車椅子の車輪の角度を変えたカイトが俺の存在に気がついた。瞬間、彼は頬を赤く染め、視線をさっと地面へとやる。
その仕草だけで心臓が高鳴り、全身が熱くなる。
足早に俺はカイトのもとへ向かう。
カイトは両手を使って車を動かし、馬たちに与える干し草が置いてある納屋のほうへ向かった。
納屋に到着するとカイトは車を動かすのをやめ、俺は背後からカイトにゆっくり近づく。
そうしてカイトの身体を抱きしめる。後ろを振り向いた彼と目が合った瞬間、唇を重ねたのだ。
目を閉じたままキスを受け入れていたカイトはブラシを手に取り、胸元でギュッと握りしめていた。
彼に抵抗の意思がないことを確認し、無言のまま彼の身体を抱き上げる。
臆病な馬たちを驚かせて騒ぎにならないよう気をつけながら、干し草の中でふたり寝転んだ。カイトの手からブラシが干し草の中へ転げ落ち、俺たちは互いの着衣を乱していった。俺はカイトの頬や耳、首筋へと唇を滑らせていく。
麻布でできたシャツの上着をベストごとたくし上げ、俺は赤ん坊にでもなったみたいカイトの右胸の乳首にむしゃぶりついた。それから左胸の乳首は牛の乳しぼりをするときよりも慎重につまみ上げる。
「あ……っ、」と小さな声が漏れたかと思うとカイトは身をよじった。
俺が水音を鳴らして小さな粒を吸ったり、舌で転がしている間ズボンと下着を太ももまで下ろされる。熱を持ち、兆し始めている性器に、傷ひとつない、しっとりとしたすべらかな手が這う。鈴口から出ている体液を手につけ、俺の分身をゆっくり擦り始める。
自身を慰め、精を出す経験がないカイトは最初の頃、俺が悲鳴をあげるくらいの握力で男性器を握ってきたり、生殺し状態となるようなぎこちない動きをしていた。
それが今は、どうだ?
理性を鎖でつなぎとめておかないと三擦り半でイッてしまう。俺の弱いところも、好きなところもすべて熟知している、俺好みの触り方をしてくれるほどに成長した。
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