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第3章 逢引3※
勃起したものの先を合わせる。収穫した麦の穂を束にして、ひとつにまとめあげるみたいに屹立を密着させ、汗がじっとりにじんだ手で放出のときを待ち望んでいるものを包み、上下に動かした。
大きな声が出て人が来ないように、ふたりだけの時間を邪魔する人間が現れないように願いながら熱く、ざらついた舌を舐め合う。もぎたての果実を噛んだとき、口の中に広がる甘く新鮮な果汁を求めるように、互いの唾液を交換する。
――決して人に知られてはいけない関係になってしまった。
男女の恋人や夫婦なら、いともたやすく口にできる言葉を、声に出し、他人に聞かれてしまったら、その時点で人生が終わる。あふれそうになる思いを今、この場で言えるのなら、死んでも構わないと内心では思っていた。
実践すれば、自分の命よりも大切なカイトに苦痛を味あわせ、地獄送りにするからしないだけだ。
それに、カイトの目線や吐息、仕草のひとつひとつから、彼が俺と同じ思いでいてくれるのが伝わってきた。素直で実直な彼は、たとえ胸に秘めた思いがあっても、目や耳で感じられる形で好意を表してくれる。
快楽を享受し、腹の中で重苦しいほどの熱の塊が渦巻き、形をなしていった。玉が持ち上がり、腹の筋肉が痙攣し始める。亀頭から湧き水のように先走り液が出て、「気持ちいい」と思うこと以外、何も考えられなくなる。上り詰めることだけが頭の中を支配していく。
犬や猫を始めとしたオスたちがメスと交尾をするときのように俺の腰は自然と前後し、手を動かす速度が上がった。
上り坂を走っているときのように呼吸が忙しなくなり、心臓の鼓動を打つ間隔が狭まっていく。欲情をあおる水音を耳にしながら目を閉じ、真っ暗な世界にいると「ヒロ、もう……」
カイトのすすり泣くような声が際立って聞こえてきた。
目を開けると眼前には、眉根を寄せ、とろけきった表情をしているカイトがいて、生唾をごくりと飲む。胸に甘い痛みが広がると同時に下半身についたものがますます強度を増し、育つ。
身体を震わせ、かわいらしい弟分の分身は切っ先の口を開閉させ、無色透明な液体を飛ばす。
「……ああ、俺もだ」
そうして俺たちは、真っ暗な穴の中へ落ちていくようにして、同時に達したのだ。
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