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第1章 終わりから始まる物語5

「なんだっていいだろ。きみには関係ないことだ!」と眉をつり上げ、叫んだ。「今日で全部、終わりだって言ってるんだよ。僕は、ここの修道士になって一生、神に仕える。そうして亡くなった人たちの冥福を祈りながら罪を償うんだ!」 「じゃあ、俺はどうなる? このまま『はい、さようなら』で納得できると思ってるのか? 俺は、おまえのことが……」 「だから、遊びだって言ってるだろ!? きみは女の子と結婚して、子どもを授かり、普通のお父さんとして生きればいい……! おじいちゃんになったら孫や曽孫を見守りながら余生を楽しめばいいんだよ! それが正しい行いなんだから……」  言葉とは裏腹に俺の好きな人は目から大粒の涙をこぼしていた。 「おまえ、父ちゃんや母ちゃんから、なんか言われたのか!? それとも村のやつらが、またおまえにひどいことを言ってきたから、そんなことを言うのかよ……?」 「きみには美人で、気立てのいい女の子が似合ってる。僕なんかよりも、ずっといい人が現れるよ。その人と結婚して、かわいい赤ちゃんのいいお父さんになれる未来がある。きみの隣にいるべき存在は男である僕じゃない……!」  そうしてカイトは俺の手を振り払った。車椅子を、すごい速さで走らせる。 「おい、待てって!」 「ヒロー、何をやってるの?」  教会の子どもたちが笑顔で俺のところへやってきて腕に、ぶら下がる。 「おまえら……」 「ぜんぜん遊びに来てくれないから、もう家に帰っちゃったのかと思ったよ」 「今日も、おいしいお野菜をありがとう!」 「あっ、ああ」  すでにカイトのやつは教会の中へ入ってしまったのか姿が見えなくなっていた。 「カイトがね、僕たちのそばにいてくれるんだって」 「この教会の修道士さんになってくれるんだよ」 「まだ、ずっと先の話になるけどね」 「ぼくたちとカイトは兄弟や家族みたいなものだから、うれしいな!」  何も知らない純真無垢な幼い子どもたちに話を振られて俺は曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。 「ねえ、今日は何して遊ぶの、ヒロ?」 「ねえ、早く遊ぼうよ!」  両腕を小さな子どもたちに引っ張られる。  今すぐカイトを追いかけ、今日こそ言おうと決心した言葉を告白したかった。  だけど俺は、これ以上、カイトに拒まれ、あいつの涙を見るのが怖かったのだ。だから――「悪い、悪い。じゃあ、今日は、かくれんぼでもしようぜ」 「やったー!」  そうして子どもたちと遊んでいるうちに日が傾いた。赤い空に浮かぶ丸い太陽が大きな黒い山――親方やじいちゃん、ばあちゃんとカイトが住んでいた山に顔を隠そうとする。  結局、カイトに今日も何も伝えられないまま、夜の帳が下りる前に教会を後にしたのだ。

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