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いつか君を見る1

 午後。全ての授業が終わると鞄からスマホを取りだした。連絡は来ていない。でも、授業が終わったし、待ち合わせ場所を決めてないから連絡をしなくちゃいけない。いつもならなにも考えずにメッセージアプリを立ち上げるけれど、今日は何故だか指が止まってしまった。別に雰囲気が悪くなって別れたわけじゃない。普通に別れた。だけど、あんな風に見つめられて、何かが胸に残ってしまった。それでも、メッセージは送らなきゃ。今日は一緒に行く約束だし、2日連続反故にしたくない。 「よし!」  気合を入れてアプリのアイコンをタップしようとしたところでイジュンからメッセージが届いた。 『授業終わった? 俺はアメ横で買ったものをホテルに置きにきた。お菓子と海苔とTシャツ買った』  そんなメッセージだった。そして顔文字が使われていて、楽しかったのだということが伝わってきた。楽しめたのなら良かった。そして、昨日のことはまるでなかったかのようなメッセージで何故だかホッとする。 『こっちも今終わったところ。待ち合わせは浅草のどこがいい? 駅? 雷門?』  送信するとすぐに既読マークが付き、数秒後には返信が来た。早いな。 『雷門は人が多いから近くのカフェがわかりやすくていいと思う』 『わかった。じゃあこれから行く。ここからだとちょっと時間あるから、カフェの中にでもいて』 『了解。じゃあ待ってるね』  ここから浅草だと40〜50分くらいかかる。上野で待ち合わせても良かったけれど、そうするとイジュンがホテルで待ってる時間が長くなりそうで。それなら周りをぶらぶらできる浅草の方がいいかなと思って浅草待ち合わせにした。まぁ、カフェで待たせるのもホテルで待ち合わせるのと同じかなと思ったけれど、韓国と日本の違いがもしかしたらカフェにもあるかもしれない。そう思ったらカフェ待ち合わせを指定していた。  電車を乗り換えること2回。浅草の駅まで約50分かかってしまった。イジュン待ってるだろうな。そう思って急いでカフェへと向かう。カフェへと行くと中は日本人より外国人の方が多いんじゃないかと思った。世界的なチェーン店だから、きっと海外の人でもメニューがわかっているから安心なのかもしれない。イジュンはどこだろうと探す必要はなかった。1階の奥の2人がけの席にイジュンはいた。 「悪い。待たせた」 「大丈夫だよ。午前中は結構歩いたからね。休むのにちょうど良かった」  そう言って笑うイジュンだけど、休むのならホテルで休めばいいだけの話しだ。俺に気を使わせないための言葉だとわかる。こうやって俺が気にしなくていいようにしてくれていることがわかって、胸が痛くなった。イジュンは優しい。 「明日海? 大丈夫? 何か買っておいでよ。学校終わってすぐ来てくれたんだろ。少し休んでから行こう。神社も東京タワーも逃げないよ」 「うん。ありがとう。じゃ、何か買ってくる。イジュンは何飲んでるんだ?」 「ん? 抹茶のフラペチーノだよ。これは韓国では飲めないからね」 「でも寒くないか?」 「多少の寒さは大丈夫だよ。それに東京はソウルより温かい」 「そうか。ま、買ってくるよ。待ってて」  そう言ってレジに並ぶ。いつもならもうホットにするところだけど、急いできたから暑いからアイスでもいいだろう。そう考えてアイスホワイトモカにした。甘いのは特に好きなわけではないけれど、嫌いなわけでもない。疲れると欲しくなる。そんな感じだ。席に行こうとしたところで、周りの日本人女性がイジュンを見ていることに気づいた。薄い顔立ちだけど、整っているといえる。だからこんなふうに女性の視線を集めてしまうんだろうな。そう思って一瞬足が止まってしまう。そうしたところで、イジュンがこちらに気づいて目が合う。ここで立ち止まってたらおかしいから、イジュンの元へと行く。 「明日海だってアイスじゃん」 「でもフラペチーノよりはマシだろ」 「だけど美味しいよ。って、もうほとんどないからあげられないけど」 「いいよ。俺はいつでも飲めるから」 「いいよね、明日海は。抹茶ってただ苦いだけだと思ってたけど、日本では色々使われてるし、それに飲んでみたらその苦さが良かった。この間のクレープみたいなのもあるし」  そういうイジュンの顔は優しく笑っている。うん、やっぱりイジュンは笑っている方がいい。そう思った。

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