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第三章 『恋人としたいこと◯か条』ー4
* *
「六月二十二日は蟹座か」
家に帰ってさっそくネットで調べる。
「冷静でクール、情に厚い繊細な内面。感情表現が苦手、か。なんか合ってるような気がする」
ふふっと思わず笑みが零れる。
(僕は蠍座だから……)
「蟹座と蠍座って相性いいんだ!」
少し声が大きくなってしまい、周りをきょろきょろする。自室だし他には誰もいないのはわかってるけど。突然誰か入って来ることもある。今日は珍しく優雅もいたし。
星座での性格や相性が絶対に当たってるとは思わないけど、良く書かれていれば信じたくもなる。
今めちゃくちゃ楽しい気分だ。
「今日はいろいろ話せたなしなぁ」
箇条書きを書いたノートの新しいページに新たに記した。誕生日、血液型。身長体重。自分の調べた星座も追加。
「まぁ最後のほうは優雅の話になっちゃって微妙な雰囲気になっちゃったけど」
楽しい気持ちが少しだけ下がった。
「またいろいろ聞いてみよう。僕から話しかければけっこう話してくれるし」
下がった気分を無理矢理上げる。
「あとは」
箇条書きは思いつくまま書き加えている。
『手を繋ぐ』
『腕を組む』
「めちゃ恋人っぽい〜。でも大学内じゃちょっとムリかな」
学校外で? と考えてみる。
(とりあえず外に出なきゃだなーー今度夕食にでも誘ってみようかな。大学外で食事! いいじゃんいいじゃん)
自分の考えにテンションが上がる。
(でも、まだ親しくするようになって間もないのに早いかな?)
また考えこむ。
(ま、いいか! 今の僕は空気読めない強引に事を運ぶヤツだ)
実際の自分はここまで強引な人間じゃない。でも陸郎に対してはこういう性格だと見せかけなきゃならない。無理矢理『恋人ごっこ』を始めるような。
僕はさっそく陸郎に連絡してみることにした。
『こんばんは』
『今日楽しかったです』
『今度食事でもしませんか?』
『あ! 大学の外でですよ!』
* *
オリエンテーションも履修も終わり本格的に授業が始まった四月の四週目。ゴールデンウイーク前の金曜日。
金曜日は五限まであり終了は十八時五十分。それから駅前かもしくは地元の駅前まで戻るか。夕食には良い時間だろう。
「すみません、お待たせしてしまって」
駅から桜葉大を往復する公共のバスがあり、そのロータリーのベンチに陸郎は座っていた。
「お疲れ様」
彼は街灯で本を読んでおり、僕が近づいて声をかけると腰を上げた。
「バスもうすぐ来るよ」
駅に向かう停留所を指差す。僕らはその列の最後尾に並んだ。
「松村さん、ゼミ四限で終わりでしたよね。だいぶ待たせてしまったんじゃないですか?」
「いや、さっきまで残って調べものしてたから。それなりにやることはあるから、気にしなくていい」
僕が申し訳なさそうに言ったので気を遣ってくれたのだろう。
ぶっきらぼうな言い方に聞こえるけど、僕には陸郎の優しさがわかった。
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