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第七章『やっぱり『触れ合いたい』の『好き』でした』ー4
洸の中では陸郎は相当悪い人間になっているようだ。それは陸郎に申し訳ない気がする。それにこれは自分が勝手に始めたことで陸郎はそれにつき合ってくれてるだけなのだから。
「松村さんは……その兄のことが好きなんです……だから……」
だから、なんと言えばいいのか悩んでいると、
「そう、わかった」
という言葉が返ってきた。
彼はいろいろ納得がいったというような顔をしていた。
「でもオレがいること忘れないで。泣きたい時はオレのとこ来なよ」
「三瀬さん……」
「あ、そろそろ授業始まるな。じゃあ、オレいくから」
彼はかなり雨脚の強い中を走り去って行った。
(あ……僕も行かなきゃ……)
そう思ったけどなんだか授業を受ける気分にはならずさぼることにして、休憩スペースに戻った。
(なんだか思わぬ展開になってしまった……)
洸はやっぱりいい人なんだなと実感した。
(ほんと……つき合ったらすごく大切にしてくれそう……でも……)
陸郎のことを想いながら洸の告白に応えることなどできるわけがなかった。
* *
あれから特に洸から何か行動なり言葉なりがあるわけでもなく、大学での接触が少し多くなった程度だ。彼の気持ちに応えることのできない申し訳なさはあるものの、今まで通りに接するのが一番良いのではないかと思っている。
やがて梅雨も明け前期テストも無事終了し、夏休みに入った。
あの時洸に言ったことはでまかせとかではなく、陸郎とのちゃんとした約束だった。
「この埋め合わせはする。何がいい?」
「じゃあ、ドリーミング・パークに行きたい!」
「いいよ」
「え? いいの?」
ドリーミング・パークは夢と冒険に溢れた大人気のテーマパークだった。一日で周りきるのが大変なほど広い敷地内に様々なアトラクションや、キャラクターたちが楽しいダンスを繰り広げるパレード。
中学最後の卒業遠足で行ったきり行っていない。僕のデートプランの最終形態。
まだまだ先だと思ってたけど。ダメもとで言ってみた。陸郎はあまり好きじゃないかもなと思いつつ。
だから「いいよ」と即答された時僕のほうが驚いてしまって思わず聞き返してしまった。
たぶんそれだけ今回のことを申し訳なく思っているのだろう。
それでもいい。
陸郎とテーマパークに行くのもこれが最初で最後かも知れないから。理由がなんであっても。
近年の暑すぎる夏のためドリーミング・パークも夏の間は普段よりも空いているらしいという噂だ。中学校以来行っていないので、実際行ってみても真偽のほどはわからなかった。
とりあえず熱中症にならないように水分補給を心がけ、陸郎の足が痛まないように休み休み回った。たくさんのアトラクションに乗れなくても、陸郎とここにいるということだけで僕は大満足だった。
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