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第七章『やっぱり『触れ合いたい』の『好き』でした』ー3

「そう……、ですか。……ですね。僕はあの人のことが好きです。そういう意味で」  陸郎にはまだ自分の気持ちを伝えられない。でも溢れて返って誰かに話したくなっていたのかも知れない。そこまでバレバレで偏見がないというなら洸に言ってもいいだろうと思った。  陸郎が本当は兄が好きで僕は「代わりにしていいから」と『恋人ごっこ』を持ちかけた、というのは言わないけど。 「あの人おまえの気持ちに気づいてないのか? どういうつもりで一緒にいるんだ?」  これはかなり陸郎への印象が悪くなっているようだ。 「松村さんは僕が好きなのは気づいてないと思いますよ。きっと兄のような気持ちでつきあってくれてるんだと思います」  洸はなんだか納得いかないというような顔をしている。『恋人ごっこ』のことは言えないから、僕らの関係について納得いくような説明ができない。それを言ったところで引かれるだけのような気もするけど。 「それに埋め合わせはちゃんとして貰えますから。一緒に行きたかったテーマパークに連れて行って貰えることになったんです」  じゃーんと両手を大きく広げて喜びを表したけれど。  彼はむっとした顔を崩さない。  それから徐ろに、 「オレにしなよ」  と言った。 「へっ?」 (オレにしなよ……オレにしなよ……?)  何度か頭の中で反芻して噛み砕いてようやく彼の言わんとすることを理解した。理解した上で冗談かと思ったが、洸はめちゃめちゃ真剣な顔をしていて到底冗談とは思えなかった。 「三瀬さん? それ本気で言ってます?」 「本気(マジ)です」  何故か急に丁寧な言葉になる。 「オレなら大事にする。おまえのこと待たせない、泣かせない」  突然の告白に頭がパニクるが、それ以前に確認しなければならないことがある。 「ま、待ってください。あのっ三瀬さんてっ僕のこと好きなんですかっ。さっき偏見はないって言ってたけど男とつき合える人なんですかっ?!」  ここは大事なところだ。 「好きだよ。バイトに入ってきた時からいいなって思ってた。好きになるのに男も女も関係ないと思ってるし、今までも男を好きになったことはある。まぁ……つき合えたことはなかったけど」  最後の言葉には少し辛さが滲み出ていて嘘ではないと感じさせた。 (男も女も大丈夫なタイプか……)  彼が真剣に告白してくれたので僕も応えなければと思った。 「三瀬さん、ありがとうございます。でも僕は松村さんのことが好きなので……ごめんなさい」  深々頭を下げる。 「うん。わかってる。わかってるけどぉ」  がしがしっと頭を掻き始めた。整えてあったスタイルが崩れる。 「あの人本当に気づいてないのか? けっこうだだ漏れなのに。だとしたら相当鈍感だし、もし気づいていたとしたら(たち)悪すぎるんじゃないか?」

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