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第八章『ぱっ……と咲いて、散る』ー2
花火大会は海岸で行われる。
開始は午後七時からだが、五時半に待ち合わせをしてぼちぼち歩いて会場についたのは六時過ぎだった。
会場には観覧席が設けられていて、もう既に人で埋めつくされている。その付近には屋台も出ていた。
「わあ〜すごい人ですね、屋台も出るんですね」
市内の花火大会だが会場まで来るのは初めてだった。自宅にいると音が聞こえ、ちらっと花火が見える。
「僕、ここに来たの初めてです」
「俺もだ」
賑やかしいのが似合わない陸郎はたぶんそうだと思ったけど。
(優雅と行ったことがあるとか、言われなくて良かった)
「観覧席は料金払うみたいですよ」
来る前にネットで調べた。事前予約が必要で、しかも競争率が高いらしい。
「らしいな」
陸郎も調べてくれてたらしいということに、ほっこりする。
「会場から離れるか」
「ですね――あ、屋台で何か買っていきましょうか」
僕らは焼きそばとたこ焼きの屋台にそれぞれ並んだ。
平然と話しているように見えるが僕の心臓はかなりどきどきしていた。
(今日こそ告白する……陸郎さんずっと、好きでした……)
『ずっと好きでした』を心の中で何度も反芻する。
焼きそばを無事購入するとその先で陸郎がもう待っていた。
「お待たせしました。えっと、どうします?」
観覧席以外もこの辺りは人が多い。
「もうちょっと離れたところに行こうか」
「ですね!」
ほんの二、三分だったのに、隣を歩いていたはずがふと気づくと陸郎がいなかった。
「あれ? 陸郎さん」
立ち止まってきょろきょろしていると人混みの中に彼が手を振っているのが見えた。
「温くんっ!」
陸郎にしては大きな声で呼んでいる。
僕は走って彼に近づこうとしたが、なかなか進めないし、やたらと人にぶつかる。何度か謝りながらやっと陸郎に辿り着いた。
「ごめんなさい。花火大会の人出舐めてました〜」
はぁと一息つく。
再び隣を歩こうとすると目の前に手が差しだされた。
「?」
不思議に思い陸郎の顔を見る。
「また離れるといけないから」
(こ、これは手を繋いでくれるってことでいいですかっ)
めちゃくちゃ嬉しくなって手を伸ばしたが、途中で止まって辺りを見回す。
「でも……陸郎さんはいいんですか?」
人に見られることを気にしないのか? という意味の問いを彼は正しく理解したようだった。
「誰も見ていないよ」
僕は大きく頷いた。
今までみたいに本当の気持ちを隠すみたいに、経験豊富そうに見せるみたいに、そんなところは微塵もなく本気で嬉しい気持ちが顔を出ているだろう。
(陸郎さん、少しは期待していいかな)
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