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第八章『ぱっ……と咲いて、散る』ー1
『恋人ごっこ』じゃなくて『恋人』になりたい。
例え彼が僕に誰かを投影したとしても。
その『誰か』はけして彼の恋人にはならないんだ。
僕を恋人にしてくれたら。ずっと一緒にいればいつか本当に僕のことを好きになってくれるかもしれない。
僕はそれに賭けようと思っている。
* *
(まぁ、まずは告白からだよね)
そうは思ってもなかなか言いだすことができない。
『優雅の代わりになる』『優雅以外の男もいけるのか試す』
そういう理由で始めた『恋人ごっこ』だ。
実は前から陸郎のことが好きで、本当の恋人になりたいとずっと思っていましたーーなんて、いまさらなかなか言いだしにくい。
大学の夏休みは長い。
陸郎と会うのはほとんど大学でだし、外で食事をする時も授業のある日の後というのが多い。休みの間は敢えて約束を取つけなければ会うこともできない。
告白しようと決めてから、何度かこちらから誘って出かけた。誘う時には今度こそ告白するぞっと思って誘うが、いざ会うと『恋人ごっこ』してますという体 が崩せない。
陸郎のあの『お泊り』の時の行動がなんだったのかもよくわからないままだった。朝になって目覚めると、陸郎はもう起きていた。まるで何事もなかったように「おはよう」と言われ、僕も何も訊ねることができなかった。
それに。
誘うのはいつも自分で、たぶん僕が誘わなければ夏休みは一回も会わずに終わってしまうだろう。
(それって、僕だけが会いたいって思ってるってことだよね……)
陸郎は別に僕に会いたいとは思っていないんだ。そう思うとかなり寂しい。
(でも当然か……陸郎は僕の恋人ごっこにつき合っているだけだもんね)
そう落ちこみもするけど。
(だからこそ、だっ)
だからこそ僕が積極的に誘うんだ。
たまには先約があると断れることもあるが、誘えばだいたいは了解してくれる。その先約がもしかしたら優雅かもしれないことは考えないようにしている。
告白するためにデートに誘っているのに、言えないまま八月も終わりを告げようとしている。
(このままじゃ夏休みも終わっちゃうな〜)
別に夏休みの間中に告白しなきゃいけないわけじゃないが、敢えて期間を決めないとこのままずるずる言えず、約束の一年が経ってしまうに違いない。
(よし! 明日こそはっ!)
明日は市内の夏の風物詩、花火大会が行われる。この日の約束はテーマパークに行くよりも前から取りつけていた。
(やっぱりね、夏のデートと言えば花火大会でしょう!)
バイトの休みもちゃんとお願い済み。花火大会の日は駅前の飲食店も混雑が予想されるので、ちょっとだけぼやかれてしまったけど。
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