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第九章『『恋人ごっこ』やめました!』ー7
試合が始まるとさらに観客は増えた。
試合は接戦で洸は何回もシュートを決めていた。バスケは中高の体育でやったがルールもうろ覚えだ。洸のポジションもチームでどんな存在かはわからないが、とにかく上手い。そして、華がある。
『部』のほうに注目があるのかと思えば、それだけでもなく、洸がシュートする度に後方で「きゃー」という声が上がる。
(やっぱ、三瀬さんモテるんだな)
本人の前では約束通り『洸くん』と呼ぶが、脳内はまだ『三瀬さん』のままだった。
それにしても……と思う。
(シュートが決める度に僕に手を振るのやめてくれないかな)
変に目立ってしまっているようで恥ずかしい。僕の後方の女子の中には『自分に?』と勘違いしている人もいて、そう思ってくれたほうが気が楽だった。
「三瀬の友だち?」
ふいに女性の声がした。驚いて声の方向に顔を向けると、男女五〜六人の集団が席二つ空けて座っていた。
「見ない顔だな」
全員が無遠慮にじろじろ眺めてくる。洸の友人だろうか? 美人・イケメン揃いで、彼の周りにいそうな部類の人間だ。
「同じ学部?」
僕が答えに詰まっていると新たな質問をしてくる。
(三瀬さん、確か理工学部だったな)
ああ見えて頭が良いらしい。
「いえ、違います」
「二年……じゃないのかしら?」
「一年です。あの、三瀬さんとはバイト先が同じで。今日バスケの試合に出るからって誘われて」
たぶんこの後にくるのは「どういう関係?」だろう。それを見越して自分から言ってしまった。余計なことも言い過ぎたような気もするけど。
「なんだ、彼女じゃないのか」
妙にがっかりした声だった。
僕が「え?」と反応したら、
「今日めちゃめちゃ張り切ってたから」
がははと豪快な笑いと共に教えてくれた。
(そ、そんなに張り切って? 僕が見に行くって言ったから?)
「彼奴、モテるけど彼女いなかったから」
「そうそう」
「今日の試合も最初は、バスケ部が二軍出してくる、舐めてんのかってぼやいていたのに」
訊いてもいないのにどんどん話が飛びだしてきて、本人のいないところで聞いていいものか、と内心あわてる。
「ねぇ〜。それに最近妙に浮かれてたから、絶対彼女できて今日見に来るんだと思ったのよ」
(三瀬さん、そんなに浮かれてるんだ。僕のことそんなに……)
僕は赤面しそうになった。
彼らは、その相手が実は目の前にいる僕だとはまったくの予想外だろう。そう思うと居た堪れない気持ちにもなる。
「彼女じゃなくてざんねーん」
と軽い口調で締めくくった。
(試合見に来たんじゃないんかーい。彼女でも、彼氏でもなくってすみませーんっ)
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