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第九章『『恋人ごっこ』やめました!』ー6
「チャラい言うなよ〜。一応真剣にやってるから」
サークルなんて名ばかりの遊んでるだけのところかと思えばそうでもないらしい。
「経験者ですか?」
「中、高とバスケ部だった」
「なんで『部』のほうに入らなかったんです?」
「レベルが高すぎた」
天井に向けた顔を手で覆い隠す。それがちょっと辛そうに見えたけど、すぐにぱっとこっちを向いた顔は元の明るい表情だった。
「二日目の十一時から体育館でやるから、見に来て! そんでその後学祭回ろ!」
僕がくすっと笑って、
「いいですよ」
と答えると、彼は手元で小さくガッツポーズをした。
「あと!」
「ん?」
「オレのこともそろそろ名前で呼んでくれてもいいんじゃない?」
その言葉に陸郎に対する対抗心が微かに見えたのは僕の思い過ごしだろうか。
「えーっと……」
なんて呼ぼうか考えていたら洸に誤解されてしまう。
「オレの名前知ってる?」
やや口を尖らせ気味にしている。
「知ってますよ。三瀬洸。えっと、じゃあ『洸さん』?」
「なんかよそよそしいっていうか、こそばゆい。もう一声! 呼び捨てでもいいし」
「さすがに年上の人を呼び捨てなんて……じゃあ、洸くんでいいですか?」
まだどこか不満そうだけど「うん」と頷いた。
「あと、タメ口でお願いします」
僕に向かって手を合わせる。
「すぐには無理ですよ、善処します」
(なんかこのくだり、前にも……)
陸郎と映画館デートした日のことを思い出す。
(あの時は……僕のほうから名前で呼んでいいか、訊いたんだっけ)
そのことを思い返して、ちくっと胸が痛んだ。
(なんだか、もうずいぶん前のことのように思える……)
* *
桜葉祭は十月四週目の金・土・日で行われる。
受験生だった僕は昨年の桜葉祭にも訪れていた。高校の文化祭とは比べものにならないほど賑やかで人も多いことに驚いたものだった。
今はその大学の学生の一人としてここにいることに感慨深いものを覚える。
とはいえ、僕はサークルにも入っていないので何も活動はしていなかった。模擬店やライヴなどで楽しんでいる彼らを見ると、僕の大学生活は少し損をしているのかもしれないと思った。
何もやることがないので一日目は学祭には来なかった。二日目の今日、洸との約束通りバスケの試合を見るために体育館へと向かった。
二階の観客席は思ったよりも人がいて、注目度が高いことがわかる。たぶん『部』のほうだろうけど。
「温くん」
真下から呼ばれて見ると洸が手を振っていた。僕も手を振り返した。洸のように大声を出すのは恥ずかしい。口パクで「頑張って」と言い、小さくガッツポーズをする。それで通じたのか、さらに激しく手を振り返してくる。
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