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第九章『『恋人ごっこ』やめました!』ー9

* * 「おはよう、温」 「おはよう。お兄ちゃんがこの時間に起きてくるの珍しいね」  珍しく優雅が朝から構ってくる。一時限から授業のある僕と違って、今日、木曜日の優雅は午後からの授業のはず。それもサボっている日も多いから朝会うことも少ない。  高校の頃は部活命でかなり真面目だったというのに。 「温、お前今日何時に帰ってくるんだ?」 「今日、バイトあるし、その後友だちと約束してて遅くなるから」  リビングを通り玄関まで歩きながら会話する。優雅もついてきていた。 「ええーっなんでだよ、今日お前の誕生日じゃん」  めちゃめちゃ憤慨している様子。  そう、今日十月三十日は僕の誕生日。十九になる。  普段構ってこない優雅だが、家族のイベントごとにはけっこう張り切る。 「この年でお誕生日って」  僕は肩を竦めた。 「お母さんにも言ってあるから」 「そうなのか」  優雅が妙にがっかりしているのでちょっと申し訳ない気がした。 「じゃあ、プレゼント何がいい? お前の欲しいもんわからないや」 「うん」  考えたけどすぐには浮かんでこなかった。 「じゃあ、考えておくありがとう、お兄ちゃん」  僕は「行ってきます」と言って玄関を出た。  苦手な部分はあるものの、僕はけして優雅のことが嫌いなわけではない。というより接触がなさすぎて好きとか嫌いとか強い感情がない。でも、今は陸郎のことでわだかまりがある。今まで通りに接するのが辛い。  駅に向かって歩いていく。  陸郎と一緒に帰って来る時、いつも別れる場所が見えてきた。そっちの道へ行くと陸郎の家がある。  陸郎と会わなくなってからここを通るのが辛い。  そういえば、と思った。 (陸郎さん、僕の誕生日知ってたっけ。優雅が近くなるとプレゼント何にしようか、いつも騒いでたって言ってたな)  陸郎のことが知りたくて、誕生日とか血液型を訊いた。その時彼が僕の誕生日を知っていたことに驚いた。 (今日僕の誕生日って、少しは気にしてくれてるかな?……なーんて、そんなわけないか)  一人でツッコんで悲しくなって、足早にその場所を通り過ぎて行った。 * * 「もう、びっくりしましたよ〜僕のシフトが変わってて!」  裏口を出るなり僕は一緒に出てきた洸に言った。  今日は授業の後五時から十時までのバイトだった。出勤すると先に来ていた洸が近づいてきて「今日オレと温くん九時までだから」と小声で言った。  僕が休みだった昨日、洸が店長に僕らの退勤時間を変更してくれるように交渉したらしい。  僕の誕生日を祝うために! 「僕の誕生日のためにわざわざ早く上がらなくても! 二人も早く上がっちゃったら大変じゃないですか」  声は押さえているがやや非難めいた口調になってしまう。  今日のことは学祭の日に決めた。でもバイトが終わってからということになっていたのだ。 「まぁまぁ、今日そんなに忙しくないから。金曜日だったらムリだったかもしれないけど」    

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