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第九章『『恋人ごっこ』やめました!』ー13
頭が混乱してて自分が何を言っているのかわからない。
「最初は……」
僕の手をぎゅっと握ったまま、彼は静かに話し始めた。
「きみのこと優の弟としてしか見ていなかったよ。きみが優の代わりにしていいとか、『恋人ごっこ』しようとか、言うからそんなことできるわけないだろって思った。だからとりあえず『友だち』でなんて言った」
陸郎は一つ一つ考えながら丁寧に伝えていく。
「でも……途中から、温くんといると楽しいし、可愛いって思い始めたんだ。きみはずっと『ごっこ』を続けていたようだけど」
薙いでいた瞳に熱が籠り始めているように見える。
「泊まりの時ホテルできみが悪戯を仕掛けてきたから、仕返ししてやろうと思ってあんなことしたけど、たぶん半分くらい本気だった」
えっ? と僕は驚いた。あの時陸郎の身体はノー反応だった。だからまったく僕になんの想いもないのだと思っていた。
「でもきみが『ごっこ』というからどうにか押し留めた」
陸郎が『ごっこ』というたびに少し後ろめたい気分になる。僕自身は『ごっこ』を越えたいとずっと考えてたからだ。
「もうあの頃にはきみを好きになっていたんだと思う」
ずっと黙って彼の言葉を聞いていた。途中で言葉をかけたくなっても今は言う時じゃないと。でも今の言葉にはもう黙っていられなくなった。
「じゃあ、なんで……『ごめん』……て?」
「温くんの言葉、嬉しかった。本当はずっと俺のこと好きでいてくれてたなんて。あの時……俺は……俺も好きだと言おうとした」
好きだと言おうとしてくれてた! その事実に嬉しい気持ちが湧き上がったが、では何故『ごめん』だったのか、それが余計にわからなくなった。
見れば、陸郎は眉間に深い皺を寄せ、ひどく苦しげな表情をしていた。
「でも、言葉にする前にもう一つの考えが浮かんだんだ。俺は本当に温くんを好きなのか」
そこで小さく息を吸う。
その言葉の先にくるものを僕はなんとなく想像できた。
「きみが優の代わりにしていいと言った時、そんなことできるわけないって思ってた。でも実はしばらくはやっぱりきみと優を重ねている自分に気づいていたんだ。だから、この『好き』ももしかしたら本当は温くんに対するものじゃないんじゃないかって、自分でも不安になった」
僕の想像は当たっていた。それは陸郎といて時々感じていたし、僕自身も不安に思っていたことだった。
「自分の気持ちもわからなくて、だから温くんにも話せなくて。情けないけど、ただ『ごめん』しか言えなかった」
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