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第十章『彼氏になったらこんなに甘々になるなんて聞いてません!』ー3
住宅街の入り組んだ道を手を繋いで歩いて、昨日とは違う公園にやってくる。
十二月の二十三時近い公園はやはり誰もいない。
「寒いから少しだけ」
「うん」
こんな時間だから、いつもそれほど長くはいない。三十分もいないくらいだ。それでも少しでも長く一緒にいられるのが嬉しい。そして、それは自分だけではなく、陸郎もそう思ってくれていると感じられるのがもっと嬉しい。
「もうすぐクリスマスですね……あ、だね」
腕が触れ合うくらいに寄り添いながら小さな声で話す。
陸郎はまたくすくす笑っている。いつも表情に乏しいのに僕はよく笑われているような気がする。
「温」
また無表情に戻る。いや、少し真面目な顔になっている。
「二十四、二十五と空けてくれる?」
「え?」
つき合い始めてから初めてのクリスマス。この間ちょっとだけ、どうしようかという話になった。でもまだ何も決めてはいなかった。
「一緒に過ごしたいんだけど」
自信なさげに視線を逸らしている。
「きみのうち、イベントごとは優が張り切ってるの知ってるんだけど」
「大丈夫! 僕も陸郎さ……と一緒にいたい!」
優雅の名前が出てきたので、つい意気込んで大きな声を出してしまった。あ、と口を押さえて周りを見たけど誰も通らなかったのでほっとした。
「そう、良かった」
逸らした視線を僕に向けて目を細めた。
「俺の誕生日にきみが選んでくれた店、あそこに行きたいと思ってる。やり直ししたい」
陸郎の誕生日。僕は一人で誕生日ディナーを食べた。彼はそれをひどく申し訳なく思っていたのだ。埋め合わせはもうしてもらったのに。
「いいですね! 僕が予約する?」
「いや、俺がしておくよ。店は前にラインで送ってくれたからわかってる。今回は全部俺に任せてくれる? ――恋人いたことないから上手くエスコートできるかわからないけど」
上手くなんかいかなくても陸郎からそう言ってくれたことにきゅんとなる。
「じゃあお願いします」
ぺこっとして満面の笑みを浮かべた。
「そろそろ行くか」
立ち上がって出入り口のほうに行くかと思えば、奥の木の茂ったところに連れて行かれた。
不思議に思って陸郎の顔を見上げようとしたら、正面からぎゅっと抱きしめられた。
つんと僕の額に自分の額を当てて、
「ごめん、もう少しだけ」
と囁いた。
どきんっと心臓が跳ね上がる。
陸郎が顔を傾けて僕の唇に自分の唇を押し当てる。お互い冷え切っているのに合わさると温もりを感じる。
陸郎の舌先が唇の割れ目をつつく。入ってきたいのだとわかった。薄く開くと、すかさず入り込んできて僕の舌を絡め取る。
こういうキスはまだ慣れてなくて心臓が壊れそうになるくらい音を鳴らすけど、すごく幸せな気持ちだった。
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