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第十章『彼氏になったらこんなに甘々になるなんて聞いてません!』ー4
「あれ、ここ僕んちの近くだ」
公園を出てまた手を繋ぎながら歩いてきた。そんなに離れていない場所なのに僕にはよくわからない道筋だった。陸郎はそこを淀みなく歩いていた。知っている場所に出た時には、陸郎の家のある曲がり角よりも僕の家のほうが近かった。
「よく知ってたね?」
「陸上やってた頃毎朝走ってたから、このへんのことはよく知ってる。今はもう走ってないけど」
陸郎はもう早く走ったり、長い時間走ったりはできない。少し悲しくなった。
「家まで送っていこうか?」
「ううん。もうすぐそこだから。それに兄に見つかったりしたら面倒だし」
「そうだな。じゃあおやすみ」
「おやすみなさい」
背を向けて歩き始めても、お互い名残り惜しげに手を振りあった。
(あ〜なんていうか……甘い甘いよ〜)
顔がにやけてしまうのが止められない。
送ってくれるという陸郎の申し出を断ったのは、優雅に見られるかもしれないのが大きな要因だ。でも実は、普通を装っている顔が今にも崩れそうだったからだ。
無表情でぶっきらぼうな陸郎が本当は優しいのを知っているが、恋愛事にはどこかストイックさを感じる。
そういう印象だった。
でも違った。彼は恋人にはこんなにも甘くなるんだ。
(でも……優雅には甘かったか……)
恋人ではなかったけど。陸郎が好きな相手だった。
陸上部を辞めても陸郎が優雅を送ってきていたのは、優雅がそうさせていたのだと、僕はずっと思っていた。今になって、あれは陸郎の意志でやっていたことに気づく。
(あー、変なことに気づいちゃった)
少しもやっとした。
(でも! 今は僕の恋人だから!)
悲しいことに未だにどこかで、優雅になんか負けないっ! と思っているのだ。
* *
「クリスマス、お泊りかぁ〜」
心はぽかぽかだったけど身体は冷え切っていたので、帰ってすぐに風呂に入った。
暖房の効いた自室。ルームウェアでベッドの上に寝転んでいる。
陸郎からの提案を思い返していた。まさか、そうくるとは思ってもいなかった。
(お泊りってことは、いよいよ……この間の続き?)
いろいろ想像してしまい、ボッと顔が熱くなる。
「や、でも違うかも。陸郎さんはそんなつもりないかも〜」
思わずそう口に出してしまい、顔は完全にやけている。熱くなった頬を両手で押さえてごろごろとベッドの上を転がった。
最後にはぼふっとうつ伏せになって考える。
キスはもう何度もしている。
それからその先も少し……。
* *
先週の土曜日。
初めて陸郎の家に遊びに行った。
僕の家にも呼びたかったが、いつ優雅と会うかと思うとそれはできない。確実にいないとわかっている日でないと。
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