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プロローグ

 はるか昔から、この世の生物はアルファとオメガとベータで成り立っていた。  男女とは違う、第二の性。  稀有(けう)な身体能力とカリスマ性に恵まれるアルファと、アルファを強く誘惑するフェロモンを放つオメガ。どちらも希少な存在で、大半の生物は平均的な能力のベータとして誕生する。  第二の性を決めるのは、遺伝子に含まれる三つの因子。アルファ因子、ベータ因子、オメガ因子それぞれの名を有した因子を総称して、バース因子と呼ばれていた。  もっとも多く遺伝子に含まれているバース因子が、第二の性を決定づける。  これが世界の理。数は少なくともアルファとオメガは(つな)がり、未来を紡いできた。  だが七十年前に大きな戦争があり、疫病がはやった。  オメガだけがかかる疫病──オメガはすべて死に絶えた。  今、この世にいるのはアルファとベータのみ。  それでもアルファの本能は、今もオメガを狂おしく求めている。

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