12 / 23

第12話 なけなしの知識

「あとは自分が気持ちよくなるように触ってみるだけだよ。どうだ、気持ちいいだけで、何も怖いことなどあるまい」 「うん……気持ち、いい……」 「こうして硬くなったペニスをメスの中に差し込み、奥で子種を放てば、運がよければ子が成せるのだよ」 ヨギの息が荒くなり、体が前後に動き始める。ここまでくれば、あとは本能がなんとかしてくれるだろう。安心した私は知っているなけなしの知識をヨギに伝授する。たいしたことは知らないが、何もないよりはマシであろう。 「……ふ、……んぅ……聖龍、様……っ」 「気持ちいいだろう? 皆やっている事だ、ヨギも気持ちがいい事を恥じる事はない」 けなげに快楽を追うヨギの頭を撫で、震える犬耳の付け根に触れてやると、ヨギの犬耳はこそばゆそうにピルピルっと跳ねた。 「人や獣人のように性的欲求の強い種族は特に、こうして自身で定期的に子種を吐き出して快楽を得たり、番とのまぐわいに備えて練習しておくのだと言うよ。ヨギもそうした方が良いであろうな」 「ん……は、あ……聖龍、さま……まぐわいって、なぁに……?」 むぅ、そうきたか。 「先程、硬くなったペニスをメスの中に差し込み、奥で子種を放つのだと言っただろう? それを『まぐわい』というのだよ。そうやって体を繋げると、ヨギもペニスが擦れて気持ち良く、相手も擦られて気持ち良くなれるのだ」 ピルピルと震える犬耳に手を添え、親指であやすように撫で上げてやれば、ヨギはクゥン……と甘えた声を出した。 「まぐわいは本来子を成すために番と行うものだが、この行為はとても気持ちがよくて、互いを存分に愛でることができるからね、恋人たちは愛を確かめるために行う事も多い。人や獣人のように性的欲求の強い種族は、気持ち良さ……快楽だけを求めるために体を繋ぐ事も多いと聞くな」 「こいびと……って、ライアとカーマイン、みたいな?」 「そう。愛しくて愛しくて堪らない、と互いに思い合っている人の事だよ。ただ、相手の同意がなければ無理に行ってはならない行為だ。獣人のオスはこんな風に昂ることも多い筈だからね、まぐわえる相手が見つかるまでは、こうして自身で鎮めるしかないね」 「ん……んう……聖龍、さまぁ……」 気持ち良さそうにヨギのしっぽがファサ、ファサ、とゆったり揺れる。力が入らなくなってきたのか、私の胸にポス、と上半身を預け甘えるように頬を擦り付け始めた。励ますように背を撫でてやれば、それさえも刺激になってしまったのか、ヨギは小さく体を震わせて身悶える。 いよいよ昂ってきたのであろう。慣れない刺激を受けるまだ未発達な生殖器からは薄い先走りが漏れ、クチクチと粘着質な音が上がっている。 「あう……んんっ、……くぅん……んぅぅ」 悩ましい声がひっきりなしに上がり、ヨギの腰が突き上げるように動き始める。上半身をあまりにも私に擦り付けてくるものだから、私の夜着はついにはだけてしまった。 「聖龍様、……聖龍、様……!」 必死に私を呼びながら涙目で見上げてくるヨギ。まだまだ手の動きが拙くてすぐには放てないのだろう、もどかしそうに体を揺らし、ついにははだけて露出していた私の肌に唇を這わせて来た。 少し感動して、私はヨギの背を優しく撫でる。 教えたわけでもないのに、こうして睦事の片鱗を見せるとは……獣人ならではの本能なのだろうか。 「聖龍さまぁ、なんか……ッ、なんかムズムズするのに、くぅ……っ、んぅぅ、なんか……」 放ちたくとも放てない疼きに焦れている。先程までは熱心に幹を擦っていたのに、今度は色の薄い亀頭を弄り始めた。自分なりに快楽を求める様はひたむきで、短命種ならではの命の輝きに満ちていた。 「とても上手だよ、ヨギ」 「はうぅ……ん、む……聖龍、さま……っ」 間違っていないのだと伝えたくて褒めたら、ヨギはなんとも幸せそうな顔をしてまた私の肌を舐め始めた。一生懸命に生殖器を擦りながら、目についたのか私の乳首に吸い付いてくる。この様子なら、いずれメスとまぐわう日が来ても問題ないだろう。 くすぐったいのを堪えてヨギの好きにさせていたら、やがて荒い息の合間にクゥン、クゥン、という切なげな声が頻繁に混ざるようになってきた。 「ヨギ……?」 黒い艶やかな髪や犬耳の根元を撫でてやれば、蕩け目で私を見上げてくる。 「聖龍、さまぁ……苦しいよぅ、クゥ……ン……お願い、さっきみたいにちんちん、触って……!」 可愛らしいおねだりに、考える前に手が伸びてしまった。私は滅多にわがままを言わないヨギのおねだりにはめっぽう弱いのだ。 「ああっ、あっ、すごい、あ、んう……っ、聖龍、さま、もっと……!」 正直先程までのヨギの拙い手淫とさほど変わらぬことしか出来ていないと思うのだが、それでも他者から与えられる刺激は格別だったのだろう。ヨギはあられもない声をあげた。私の体をまさぐり、乳首をちゅうちゅうと吸いながら、一気に高みへとのぼりつめていく。 「んむ、はぅぅ……ん、んぅ、んむ、ん、んーーーーッッッ」 「痛ぅッ」 乳首に、鋭い痛みが走って、私は思わず声を上げた。

ともだちにシェアしよう!