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第18話 もう止められない
こんなに情熱的な口づけは初めてだった。
唇を這っていたかと思っていた舌は強引に私の口内に押し入ってきて、強く柔く舐め揚げてくる。上顎や歯や唇の裏側なんてところが身を捩りたくなるほど感じるなど、こんなに長く生きてきた私でも知る由もなかった。
「……ふ……、ん……」
知らず声が漏れる。
ヨギを押し返すことも最早できず、ヨギの情熱的な口づけに身を任せていたら、強く舌を吸われてヨギの口内まで引きこまれてしまった。
やわやわと舌で舌を揉まれ、犬歯でざり、と甘噛みされる。快楽と僅かな恐怖に私の体はびくりと震えた。
龍族である私の舌が、まさかこのように硬いもので嬲られるとは……。
舌という急所のひとつに固いものを柔くでも突き立てられて、本能的に舌が逃げる。
だが、ヨギは私の舌を逃がす気など微塵もないらしい。
逃げようとする私の舌を激しく吸って口の中に捕らえ、何度も何度も歯を立てる。私の舌をやわやわと削る硬質な感触が次第に快感を生み、息をうまく吸えないことも相まって意識が朦朧としてくる。
食べられてしまいそうな口づけを堪能することしか頭になくなった頃、熱をもった舌をじゅうっときつく吸われてから、私の舌はようやく冷たい空気に触れた。
「……」
飲み込めず口の端から零れ出た唾液をぬぐうこともできず呆然としていたら、ヨギがぺろりと舐めて心底嬉しそうに笑う。
なんと幸せそうな顔で笑うのか。
興奮したように黒い耳がぴくぴくと動き、黒いしっぽが嬉しそうに揺れる。あどけない顔で笑っていたのに、ヨギの銀の瞳はギラギラと光り、私の体を舐めるように見て熱をはらみ力を増してくる。
もう、この子を止めるすべなどない。
そして私自身も、見下ろしてくる銀色の瞳を受け入れたいと思い始めていた。
ヨギの瞳が獲物を狙うように細められたかと思うと、私の喉笛に吸い付いてきた。
「あ……っ!」
あまりの勢いについ声が出る。
獣人の本能なのだろうか、ヨギは恐ろしいほど情熱的に私をむさぼり始めた。
喉に吸いつき、舐めまわし、その一方で私の胸の粒を一心に弄る。喉に飽きたら今度は胸の粒を舐めしゃぶり、甘噛みし、吸って、舌先で弄ぶ。
口内を舐めまわされ噛まれたときにも衝撃だったが、こんな胸の飾りがジンジンと熱を持ち、快楽を得る部位になるなど信じられない。股間に直結する快楽に、私はたまらず啼いた。生理的な涙がわずかに眦を濡らす。
「ああっ、ヨギ……!」
瞬間、ヨギの耳が大きく震えた。
ピーン! と耳が立って私の息遣いまでをつぶさに聞きとっているようだ。なんとなく恥ずかしい。
「聖龍様のそんな声、初めて聞いた……」
嬉しそうに目を細め、スリ……と私の腹に頬を擦り付けながら、ヨギが初めて私の生殖器に指を這わせた。これまでは布越しに、ヨギの生殖器をこすりつけてくるだけだったというのに、今日は布越しですら無く、明確な意思を持って私の生殖器に触れている。
「……っ」
生殖器に直接的な刺激を受けることが、こんなにも官能をかきたてるものだとは知らなかった。
「ふ……っ、あ……」
「気持ちいい? 聖龍様」
「ああ、気持ちいい……」
いつもは私がヨギに与える快感を、今日は私が与えられている。しかも、私よりもずっと多彩な手の動きをしている気がするのは気のせいだろうか。
私の腹を熱心に舐めながら、その手はくちゅくちゅと亀頭をくじり、絶え間なく刺激を与えてくる。
「おれねぇ、ライアとカーマインに、オス同士で番う時のやり方、ちゃんと聞いてきたんだ」
腹のところから私を見上げたヨギが嬉しそうに笑って、どこに隠していたのか愛らしい小瓶を取り出した。
「……?」
「ローションって言うんだって。これを塗るとね、気持ちよくなれるんだって」
「気持ち、よく……?」
「うん! なんか特別な効果? がいっぱいついてるからってカーマインがくれた」
そう言うとヨギは、そのローションとやらをたっぷりと指にとって、私の片足を持ち上げたかと思うと尻の穴へと指を這わせる。
「何を……?」
「オス同士で番う時はね、ここに挿れるんだって」
「ひっ!?」
尻の孔に指が差し入れられてぎょっとした。
「こ、これ、ヨギ!」
「聖龍様のナカ、あったかくて気持ちいい……」
私は焦って声を上げるが、ヨギはむしろかつてなく幸せそうな顔で円を描くように指を動かしていく。内臓を指でまさぐられるなど、さきほどの舌を歯で苛まれるよりも恐ろしい。
けれど、それでもヨギを押しのける気にはなれなかった。
「聖龍様、好き……ねぇ、気持ちよくなって」
うっとりした顔で言われれば、もう受け入れるしかない。これほどまでに私を求めてくれるヨギにならば、命を預けるにやぶさかではないのだから。
すべてを受け入れる覚悟ができた私は、体の力を抜いてヨギの好きにさせる事にした。
「? 入りやすくなった……」
一瞬で気づかれた所を見るに、先ほどまでの私は余程体に力が入っていたのであろう。
……などと考えて居られたのはそこまでだった。
一緒じゃないと意味ない
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