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第6話

新しい職場は、6名しかいない小さな会社だが、今後の成長には期待できるところだ。 社長をはじめ、個人の能力は高く、更にチームプレイができる。 例えば、コミュニケーションが苦手な人には、話が得意な人がフォローをし、誰かが急遽休んでしまっても、できる人がフォローをする。お互いにどんな仕事をしているのか、共有されているため、悩んで手が止まっていたら声をかけてくれる。そんな職場だ。 この会社を立ち上げたのは、社長の(北島凌雅:きたじまりょうが)と社長の友人2人(新田陽翔:にった はると)(篠原蒼士:しのはら そうし)だ。 立ち上げ当初は3人だったところに、新しく2人、俺の順番に入社したのだ。 仕事は真面目に、だけど力を抜く時は抜く、その塩梅がとても居心地良い。 *** リョウに、めちゃくちゃに抱かれた日から、確かにボロボロで生きるのが辛いと思う気持ちは心に存在するのだけど、屋上に行きたいと思った時は、まずはリョウに連絡しよう思っている。 あの小さな紙が『お守り』になっているのだ。 もうすぐ、クリスマス… 淳平と付き合っていた、去年のクリスマスは、淳平が実家に帰らないといけなくなったと言い、一緒に過ごせなかった。きっと、随分前から俺の方が浮気相手になっていたのかと思うと、気持ちが落ち込んでいくのがわかった。 24日は職場で、参加自由のクリスマスパーティーが開かれた。 参加自由と言っても結局みんなが参加して、お酒も入り 和気藹々と楽しく過ごしていたが、クリスマスの話になり、それぞれ恋人の話しになっていく。結局、みんな恋人がいなくて、タイプの話になる。 新田陽翔が1人で喋ってることに、みんなが相槌を打ったり、笑ったり、突っ込んだり、本当に話し上手で人を 惹きつける。 「なぁなぁ、澤田のタイプは?」 と、急にきた質問におどろいたが、タイプなんて考えたこともない。でも、一つ挙げるとすれば… 「愛してくれる人」です。 澤田らしい、きっと見つかる、そんなことを言ってくれる。 上手に笑顔は作れていたが、内心では、そんな気休めに対して、うんざりしていた。本当の俺を知らないくせに…と、そんな自分にさえ嫌気がする。 明日は土曜で、次が日曜だから2日間の連休だ。 どうせ無理だと決めつけているくせに、お酒の力と、落ちた心のせいで、思考回路が鈍くなる。 『お久しぶりです。澤田南です。突然で申し訳ありません。今日、これから空いてますか?』 メールを送ってすぐ、後悔したもののすぐに既読になった。 『少しお酒飲んでますけど、空いています。どうかしましたか?』 『いえ、時間があればお会いしたいなと思いましたが、私もお酒を飲んでいるので、今日はやめておきます。勝手で申し訳ありません』 『今、調べたら、この前のホテルが一部屋だけ空いていました。今からどうですか?』 『でも、仕事帰りで何も用意していませんし…』 『私も同じです。会社の飲み会だったので。2人で飲み直すのもありだと思いますが、行きませんか?』 『これ以上飲めるか分かりませんが…この前と同じようにしてもらえますか?』 『はい。大丈夫です。』 『では、お願いしたいです』 前と同じホテルで、ハンカチを目隠し代わりにして待つと、三回ノックの後、入ってきたのがわかった。

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