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第21話 日常と背徳の狭間★
お風呂を出て、僕は寝室に入る。
昨日一昨日と続いた行為。
昼は何事もなかったかのようにカナタが接するため、何の話もしていないから今日もするのかはわからない。
だから今日もその準備はしてきたけれど。
明日は学校だし、しない、だろうか?
それとも……?
カナタの考えそうなことが、全然予測できなかった。
寝室にはカナタの姿がないし、どうするつもりなのだろうか。だからといって自分から聞きに行くのもおかしい。
どうしようか悩むが、考えても仕方ないと思い僕はベッドに入った。
きちんと準備している僕はまるでそれを期待しているみたいだ。
そんなつもりはないけれど……もしかしたら僕は本当に、カナタとの行為を悦んでいるのかもしれない。
それで、いいのだろうか? ここ数日何度も繰り返している問いかけだけれど、答えなんて出ない。
僕が布団に入りうとうとしだした頃、ドアが開く音がした。
近付く足音。布団をはぐ様子に僕はゆっくりと目を開いた。
そして背後にカナタが横たわり、僕をぎゅっと抱きしめてきて、彼は俺の首に顔を埋めてそこに口付けた。
「首……チョーカー着けてくれてるんだ。嬉しい」
甘い声で言い、カナタは僕の首をぺろり、と舐める。
着けてように言われたわけじゃないけれど、風呂から出たとき僕は無意識にそれを首に巻いていた。
「カナタ……」
名前を呼ぶと、彼はわざと音をたてて僕の首を吸い上げる。
「ん……」
快楽に慣れた身体はすぐに反応し、僕は息を漏らした。
これは今夜もしたい、ということなのか?
それにしてもカナタは僕の首を舐めたり口づけたりするだけで、それ以上のことはしてこない。
まるで蛇の生殺しだ。
「音耶……」
甘く切なく響く声に僕の腹の奥が疼いてしまう。
「あ……はぁ……あぁ……」
「大好き音耶」
囁き、首を愛撫するだけでそれ以上触ってこないのがすごくもどかしい。
僕に聞かせるようにわざと音をたてて首や耳を舐めてくるのは、僕から欲しいと言わせたいのだろうか?
「ん……あ……カナ……」
僕の息があがり、後孔が疼き出す。
欲しい、でも言えない。
そんな相反する思いが僕の中で暴れだす。
カナタは保護者である僕のプライドをとかすように、首への愛撫を繰り返した。
「カナタ……だめ、欲しくなる、からぁ……」
絞り出すような声で言うと、カナタが囁く。
低く腹に響く声で。
「何が欲しいの?」
そんなことわかるだろうに。
カナタは僕に言わせたいのか?
彼の愛撫と声でわずかに残る僕の理性が、今にも壊れそうだった。
カナタは僕の耳を舐め、
「ねえ、音耶……」
と甘く囁く。
そんな事されたら耐えられるわけがない。
理性が音を立てて崩れていくのを感じながら、僕は身をよじってカナタの方を振り返り、息を切らせて言った。
「僕は……カナタが欲しい」
すると、彼は嬉しそうに頷く。
「俺も、音耶が欲しい」
その笑みが、まるで天使のような無邪気な笑顔に見えた。
カナタは僕の首に口づけながらTシャツをまくりあげ、僕の乳首に触れた。かりっと爪先で引っかかれ、僕は声を上げる。
「ん……あ……」
「音耶の匂い好き。ねぇ、他の匂いつけてこないで」
「う、あぁ……!」
言葉の後、カナタが僕の首にがぶり、と噛みついた。
痛みに涙が出そうになるが、噛み跡をぺろり、と舐められて思わずびくり、と震えてしまう。
痛いのに、それを快楽と感じてしまうのは長年娼夫をやってきたからだろうか。
身体は何も変わらないのに、感覚は変質しているらしい。
「噛まれるの気持ちいいの?」
「そ、んなわけ……あ、だめ……」
首を甘噛みされて声を漏らしていたら、なんの説得力もないだろう。
「音耶、気持ちよさそう」
そんなつもりはないのに、身体は痛みに反応して快楽を拾い上げている。
カナタは背中に口付けの雨を降らせると、切なげに呟いた。
「こんなに痕をつけても消えちゃうんだよな……」
その言葉を聞くと胸が締め付けられる感じがする。
傷が残らないのだから、キスマークのうっ血痕なんてすぐに消えるに決まってる。
それが嫌なのだろうか?
僕には理解できない想いだった。
「ねえ音耶……明日、仕事行くの?」
カナタは苦しげに言い、僕の耳たぶを食む。そんなこと聞いてほしくないのに。
僕の仕事がバレてしまっている今、それに対して僕は何も答えられなかった。
生活のためには金を稼がないとだし、カナタの進学にだって金が必要だ。
金銭面で苦労はさせたくないし、だからできるだけカナタに金を残したいから。
でもそんな事言えず、何も答えない僕に、カナタは覆いかぶさり哀しげな目をして言った。
「……なんで娼夫なの? ほかに仕事はあるよね」
その問いかけに、僕は顔をそらす。
僕に、普通の仕事なんてできるわけがない。
娼館のマスターだってカナタだって、十年以上、僕の見た目が変わらないことに違和感を覚えているのだから。
普通の場所では目立って仕方ないだろう。
「僕は……旧人類だよ。カナタにはわかるでしょ? 僕がどれだけ目立つか。普通のところで働いても……結局僕はレイプされる日々をおくるだけだよ」
「あ……そうか……なんか、服、破れて帰ってきたこと、何回かあったっけ」
そうだ、今でも僕はレイプされることがある。
もちろん法律でレイプは犯罪と定義されているが、男である僕に、警察は冷たい。
性犯罪は軽く扱われがちだ。とくに、男への性犯罪は。
異形は、旧人類の僕の存在は美しく穢したいものらしいし、その歪んだ感情を向けられるのは日常的なことだった。
「ねえ……どうしても無理なの? 仕事辞めるの」
哀しげに顔を歪ませ、カナタは僕の肌を撫でていく。
黙る僕にカナタは顔を近づけ、唇を重ねた。
僕も彼の首に腕を絡めて、自分から舌を出す。
ぴちゃり、と絡まる唾液の音が響き、僕の口の中をカナタの舌が蠢く。
まだぎこちなく拙いキスだけど、その事実が僕をことさら煽り立てていた。
「カナタ……」
キスの合間に名を呼ぶと、カナタは唇を離しうっとりとした顔で言った。
「音耶、中で出したい」
その意味を理解する間もなく、カナタは僕の足を抱え上げると、そのまま中に入ってきた。
「……カナタ……? それは、だめっ……」
首を横に振って抵抗してみせるが、カナタは腰の動きを止めなかった。
先端が内壁をえぐりながら奥へと入っていき、結腸へとたどり着く。
中に出したい、ていうことはつまり……
拒絶感と期待感が、僕の中でせめぎ合う。
中に出されるのは本当に嫌なのに、僕はなぜ、カナタに望まれて悦んでるんだ……?
そんな僕の気持ちを察しているのか、それとも別の理由かはわからないけれど、カナタは首を横に振る。
「やだ、やめない」
そう冷たい声で告げ、カナタはぐい、と腰を埋めた。
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