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第1話
ある冬の日の昼下がり、一人の若者が窓辺から空を見上げていた。晴れ渡る空は、窓辺に佇む若者の心そのままに、青く澄み渡っていた。
若者の名は清蓮 。
友安国 の皇太子。
今日は彼の人生の節目となる、成人の儀が執り行われる日であった。
成人の儀とは、後継者が成人となったことを祝うとともに、この日をもって正式に友安国の継承者として認められる、宮廷で執り行われる最も重要で荘厳な儀式の一つである。
「それにしても、長かったな……」
清蓮は感慨深げに言った。
この日を迎えるまでの道のりを考えると、清蓮がそう言うのも無理はなかった。
元来、成人の儀は清蓮が十六歳の時に行われるはずだったからである。
今から三年前のことだ。
清蓮は晴れて十六歳となった。
祝賀の準備が完璧に整うと、あとは当日を待つだけであった。
しかし、不運なことに、当日の深夜から降り始めた大雨は、時間が経つにつれ激しさを増し、国一番の大河、無間川 が氾濫、各地に甚大な被害をもたらした。当然のことながら儀式は延期、復興が国の最重要課題となった。
その復興を阻むかのように、翌年には疫病が発生した。昨年になってようやく国土も落ち着き、疫病も終息に向かうと、人々は日常を取り戻しつつあった。
人々の間では、皇太子を不憫に思う者たちも少なからずいたが、そこで暮らす人々にとっては、世の泰平、生活の安定があってこそ、お祝いしてあげようというもので、国を挙げての祝祭にはまだ時間を要した。
そして、無間川の氾濫から三年。
儀式を妨げるすべての要因が取り除かれるに至って、清蓮はようやくこの日を迎えることができたのである。
国を挙げての祝賀は、成人の儀の三ヶ月前から各地で始まり、友安国の人々は歌い、踊り、酒を飲み、見たことも、会ったこともない皇太子を無条件に祝福したのである。
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