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第61話(番外編2)噂のお兄さん
満月は早朝顔を洗おうと洗面所に向かうと、洗面所には女性用のカミソリを持って美月が待機していた。
美月専用のヘアバンドを差し出された満月は受け取りはしたものの、そのまま立ち尽くしていた。
「美月さんが満月の眉を整えてやろう。ヘアバンドしてこっち向け」
「え?」
「満月はそのままでもまぁまぁ良い線いってるけど、やっぱり眉整えたらイケメン度上がるんじゃないかと思ってさ」
そう言われても美月の物を身につけるのに躊躇していた満月に、美月はヘアバンドを奪い背伸びをして満月の髪を上げた。
「わっ、ちょっと美月さん……」
「大人しくしゃがめよ。このままだとお前の目にカミソリが刺さるぞ」
ほぼ脅しのような言い方をしてまで眉を整えたい衝動に駆られてるならばと、満月はしゃがんだ。
「目閉じててもいいけど、バランス取りたいからカミソリの感触がないとき目開けろ」
間近に美月の整った顔があると、どうにも目を開けることは出来ないでいる満月に、ふぅ~と息を吹きかける。
「なんですか、美月さん?!」
「あー、悪い。切った眉毛を飛ばしてた」
まぁ嘘ではないし、そのまま美月はもう片方も整っていく。
また息を吹きかけると、満月は更にキツく目を瞑ったので、美月は微笑してから唇を軽く重ねた。
いきなりの口付けに満月は目を見開き、後ろに倒れた。
「みっ美月さんっ……」
「だってさー、お前可愛いんだもん」
美月は全く悪びれることも無くそう言うので、満月に怒るという選択肢はなかった。
「それより、やっぱり満月のイケメン度が上がったな。俺見る目あるし眉整えるのも上手過ぎだろ」
満月は起き上がり、洗面所の鏡で自分の顔を覗き見た。
「自分ではよく分かりません」
軽い気持ちで満月の眉を整えたが、このあと車で学校まで見送った美月は大声で彼に向かって言った。
「女に言い寄られても浮気すんなよ?!浮気したら殺すからな!!」
その日美人のお兄さんからの見送り場面 を見た生徒に噂を流され、イケメン度が上がった満月は学校で注目の的となった。
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