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第7話
僕は早く治りたかった。
治って椿と話したい。
このドキドキは普通になるのかな。
「椿、夜はどこで寝るの?」
僕は不思議に思ったことをそのまま言葉にした。
「植物は眠らないんだ。だから今回もリビングにいるよ」
「なら僕の部屋に居て?……出来たらベッドに一緒に入ってくれたら嬉しいかも」
僕は甘えたいんだ。
きっと病気だから不安なのもあるけど、椿がいつ消えてしまうかもと不安なのもあるんだろうけど。
「冬馬は俺を風邪引きにさせて治す?それで僕に感染って、俺が風邪に……」
「違うよ!!……分かった、椿はリビングに居てよ」
「冗談だよ。冬馬と一緒にベッドに入る日が来るなんて夢みたいだ」
椿は僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。
その手がおでこに当たったとき、暖かかった。
椿は本当に植物なの?
人間じゃないの?
僕はベッドの隅に寄り、椿の入る場所を作った。
「母さんに見られたら、なんて言い訳しようか」
そう椿は言ったけど、取った行動は僕の希望通りベッドの中に入ってくれた。
「言い訳なんてしなくていいよ。話ししてて、そのまま眠っちゃったって言えば」
「今年の冬馬も『我が道を行く』だね」
今年の僕も?
じゃあ昨年の僕は同じようだった?
一昨年もその前も?
でも僕はどうしてか聞けなかった。
まるで去年までの僕にヤキモチ焼いてるみたいで恥ずかしかったから。
「冬馬?」
「来年ももし人間になれても、僕家にいられないから、椿には会えないな」
「冬馬、東京で勉強頑張るんだよ」
「椿は僕が東京に行くの賛成なの?!」
「俺に止める権利はないからね」
「なんで止めてくれないの?」
「止めてほしかった?」
僕は図星を刺されて……椿の胸に顔を埋めた。
すると椿の腕が僕を優しく包み込んでくれた。
その暖かさが僕の目を熱くさせた。
僕は言葉に詰まっていた。
だってそれは『図星』だったから。
僕は東京になんて行きたくないんだ。
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