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第8話

「……椿って意地悪だ」 僕は椿に図星をさされて、恥ずかしくて……悔しくて涙が出そうだった。 椿が居ない反対方向の壁に向かって寝返りをうった。 なんでいつも僕はこんな気持ちにならなきゃいけないんだろ。 「でも冬馬は俺に止めてほしかった。『人間なら止めてくれた?』って聞いたよね」 「っ分かってるなら、聞いて欲しくない……!!」 情けないけど、僕は泣かずにはいられなかった。 だって、椿は本当の僕の気持ちを知ってるから。 僕は何でも椿に打ち明けていたから、知らないほうがおかしいんだ。 後ろから椿の腕が、僕の身体を優しく抱き締めてくれた。 「冬馬、意地をはるのは良くないよ。東京に行きたくないなら伝えるべきだ」 「……僕は……僕は、と、東京に行って、……勉強しなきゃ」 「それは本心じゃないだろ。冬馬が弁護士にならなきゃいけないということは『義務じゃない』んだ」 なんで椿がそんなことを言うのか僕には分からなかった。 椿は僕をどうしたいのかも、分からなかった。 僕はどうしたら良いのかすら、分からなくなった。 「冬馬が素直になったら、俺も素直に打ち明ける」 すると椿は僕の首の裏に顔を埋めてこう言った。 「素直にならないと、自分自身が可哀想だ」 そう呟いた。

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