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第6話 異世界で見つけた大事な人【終】

俺は辞書を手に入れた日から、アルバールと意志疎通を図れるようになった。 けど、心の距離も身体の距離も逆に離れているように感じる。 確かに、アルバールの行為は俺からすれば特に初回は確実にレイプだったけれど、アルバールが勘違いしたのも今となれば理解出来る。 どちらが悪い訳でもなくて、ただ不運だっただけだ。 ……と、アルバールに何度も言っているのだが、彼は自分を許せないようだ。 だから、もう俺に触ってくる事はない。 お互いの勘違いを認めてから、彼は俺を、単なる仲の良い友達の様に扱っていた。 本当だったら普通の距離感である筈なのに、それがなんとなく俺には愉快ではなくて、胸の奥がモヤモヤする。 男同士でセックスする願望は、俺にはなかった。 恋愛対象だって、当然女だったし。 だから俺にとっては、今の状態の方が良い筈だ。 お尻が痛くなる事もないし、喉が枯れる事もない。 だから……アルバールとの距離がなんだか物足りないだなんて、思ってない筈なんだ。 けどそう、思ってないと思いながら、アルバールがふとしたタイミングで俺の傍から離れるととても寂しく感じるのが現実だった。 神様は、大抵の物を俺達に与えてくれた。 電気ガス水道に関するものとかは無理だけど、こちらの世界の素材で出来る物……羽毛布団やベッド、テーブル、椅子なんかは惜しみなく下さるのだ。 一番嬉しかったのがお風呂。 水道は下さらないのに、神様は代わりに「天然露天風呂」を下さった。 天然温泉掛け流しという贅沢さ。 神様がくれたもので一番活躍するのはやはり辞書で、暇さえあれば読み耽っている。 日本の辞書とは違うもので、文字を知らないアルバールは確認というものが出来ないから、全て日本の単語が漢字や平仮名、アルバールの言語の単語がその隣にカタカナで記載してある。 カタカナの上に折れ曲がった矢印がひいてあったり、普通は小さくならないカタカナも小さく書いてあったりで発音のイメージが伝わるようになっていた。 それが、日本語からも現地語からもあいうえお順に並んでいる。 そういえば、アルバールがよく俺に言ってた「オカす」は辞書をひけば「可愛い」だった。 アルバールが「可愛い可愛い」と言いながら俺を抱いていたのか、と思うと顔に熱が集まる。 けれど、がっしりしたアルバールから見れば俺は小さくて可愛い存在なのかもしれないが、アルバールだってここに女性がいたとしたらまた見方が変わるかもしれない。 そう考えると、やはり胸の奥がモヤモヤした。 夜中にふと目が覚めて、アルバールがいない事に気付いた。 ここ最近、毎日だ。 一度アルバールを探してみると、俺の名前を呼びながら温泉の近くで一人でシコッていた。 その時は動揺して、直ぐに自分の寝床に戻ったけど、なかなか寝付けずに思わず自分も布団の中でヌいた。 オナる時、以前の俺はAVの女性を思い浮かべる事が多かったのに、何故だかお気に入りの女優の顔が思い出せなくて。 アルバールに抱かれた時の、アルバールの身体の熱さや重み、触れる指先の優しさ、身体に押し入ってくる時の圧迫感、耳に囁く甘い声、腰を引かれた時の壁を擦られる快感、恥ずかしい体位で全てを暴こうとするアルバールの俺に対する支配欲……それらが最終的には俺を果てさせた。 今の距離感が普通なんだから、余計な事はするべきじゃない。 そうはわかっているけど、手の届く距離にいるのにお互いを想いながら自慰するのはもう手遅れな気がしていた。 身体を交えるその気持ち良さを、既に俺達は知っているのに。 ……渇望しているのに。 結局俺はその日布団から飛び出し、アルバールの元へ向かう。 毎日我慢して我慢して我慢して、抱いて欲しいと訴える身体が期待しているのがわかった。 「セイヤ……っ」 俺に背を向けて、大きくなった欲望を宥め様とするアルバール。 そのアルバールの大きな背中に、声を掛ける。 「アルバール」 びくり、と身体を揺らして、切羽詰まったような顔で振り向いた。 瞳に浮かぶ情欲を前に俺は……歓喜した。 「アルバール、えっち、スル」 「エッ!?」 「スル、ネガウ」 アルバールは、ごくりと喉を鳴らした。 ……けど、俺と同じく喜びが隠しきれない表情。 嬉しかった。 アルバールの気持ちが冷める事なく、俺と同じ気持ちでいてくれる事が。 身体から始まったけど、俺はアルバールの優しさや気遣い、思い遣りに触れて、それらを与えられ過ぎて、もう後戻りは出来ないところまで彼を好きになってしまったのだ。 ……また、アルバールと繋がりたい。 愛し合いたい。 俺は硬直して胡座をかいた姿勢から微動だに出来ないアルバールの前にぐるりと回り、その上に跨がる様に座った。 アルバールに唇が触れるだけのキスを落としながら、俺の後ろの穴をアルバールの脈打つちんこに狙いを定めて腰を落とす。 「ぁっ……、つぅ……っ」 息を吐きながら、くぷりと亀頭を咥え込み。 アルバールの肩に両手を添え腰を揺らして、まだ慣らしてない穴にペニスの先走りを馴染ませた。 やや滑りが良くなってから、ちゅぷ、ちゅぷ、ちゅぷ、と何度か出し入れを繰り返す。 けど、全然足りない。 早く奥まで入れて、あの快感を味わいたくて── 「セイヤっ……!」 俺の懸命な誘惑に、アルバールが食らい付く。 俺は頭を固定されて舌が抜けるんじゃないかって位、むしゃぶり尽くされた。 腰を掴まれ、ガツンガツンとちんこで突き上げられる。 欲しかったモノを与えられて、目の前がチカチカと光る。 ぢゅぽっ! ぢゅぷ♡ ばちゅん! ばちゅん!♡♡ 「ぁあっ……♡ 気持ちぃ……っっ♡」 「スキダセイヤ、スキダ……!!」 アルバールの身体にすっぽりと収まった俺は、そのペニスを下の穴で貪欲に呑み込んで離さない。 「しゅ♡ ごいっ……♡♡」 限界までぎちぎちに拓かれた穴に、極太のちんこが出入りするのが堪らなく気持ち良かった。 突かれる度に俺のタマはびたんびたんと激しく揺れ、触れてもいない俺の息子はぎゅんぎゅんと体積を増し今にも発射しそうだ。 俺のお尻はアルバールのものを逃がすまいとその根元まで吸い付き、腸壁は蠢いて種付けをねだった。 どちゅ! どちゅん♡ どちゅん♡♡!! 「ふぁ♡ イイ、いっちゃう……っ!♡♡」 アルバールの動きが早くなり、貪るように抱かれ。 「セイヤ、モウ、イク……っ!」 どぷ……♡ どぷ、どぷ……♡ やがてお互い弾けて、大量のザーメンが俺の身体の中に注がれた。 お尻から染み込んだそれが俺を狂わせ、そのまま激しくアクメした。 *** 毎日同じ時刻にアルバールは儀式を行う。 今日は久々に女性の見物人が二人いた。 『あのNPCの筋肉ヤバ!』 『やたらイケメンだね』 どんな女性が来ても、アルバールが「オカす」と言う相手は俺だった。 彼は、俺と出会った時からずっと、俺をただ一人の伴侶として大切にしてくれる。 たまに無性に日本が恋しくなる時は勿論あるけど、透明人間だった頃に戻りたいとは思わない。 「セイヤ」 ボーッと女性二人を見ていた俺に、アルバールは軽くキスをしてから儀式に向かった。 俺に触れている時だけ、アルバールの姿は見物人からも見えなくなるらしい。 儀式の最中、俺もこの世界の神様に感謝を捧げる。 俺をこの世界に連れて来て下さりありがとうございます、と。

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