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第21話 猫、こだわりのベッドを自慢する

「いいよー。でもせっかくだから新居でね♡」 「は?」 「ちょうど新居の準備ができたから、トルスを連れにきたんだよ」 「もう⁉ 早くないか?」 「だって、一刻も早くトルスと一緒に暮らしたかったから。さ、行こ行こ!」 「え、いや、まだ引っ越しの準備なんてできてないぞ」 「引っ越しはあとでゆっくりでいいじゃん。ここから十分もかからないとこだし、お試しでひと晩必要なものだけ持っていけば。ゴムとか」 「おまっ……」 「寮にいるより、思う存分いちゃいちゃできると思いますけど~? しかも僕、今はネコ耳、ネコしっぽなんだよね?」 「っ……」 完全に落ちたな。 真っ赤になって言葉を無くしたトルスの代わりに、マジックバッグにあれこれ詰め込んで、有無を言わさず新居へと連行する。 残念ながら夜になってしまってるから、トルスには家の外観や周囲の雰囲気は分からなかっただろうけど、明日はふたりとも休みだし、起きてからふたりでじっくりルームツアーすればいいんだもんね。 扉を開けたらすぐにリビングで、木目が綺麗な木のテーブルとふたりでいちゃいちゃするために買ったソファが出迎えてくれる。でも今は君の出番じゃない。 「え、おい、そんな押すなって。ゆっくり見れないだろ」 トルスのクレームは当然のごとく聞き流し、広い背中を押したままリビングと一体型のキッチンを通り抜け、僕は一目散にふたりの為の寝室へと向かった。 扉を開けると、トルスの目が驚きで見開かれる。 「うわ、でかっ」 「素敵なベッドでしょ~!」 「キングサイズ……?」 「そう! 丈夫で、おっきくて、寝心地最高! 僕イチオシのベッド!」 自信満々で言う僕を見てポカンとしてたトルスは、ふ、と笑い始めた。 「え? なんで笑うの」 「だってお前……! 新居で一番に見せる場所が寝室で、しかもこだわりまくったキングサイズのベッドって……」 「な、なんだよ。ふたりの愛を育むには重要だろ……」 確かに直接的すぎたかも知れないけど! 「ああ、すごく重要だ」 そう同意してくれつつも、トルスはまだ楽しそうに笑っている。 さすがに恥ずかしくなってきてぷく、とほっぺたを膨らませたら、トルスはその頬をつついてから、僕をぎゅう、と抱きしめてくれた。 「一生懸命に家を探して、ふたりで暮らす場所を整えてくれたんだな。ありがとう」 「トルス……!」 「しかも、こんなに可愛い誘惑まで。俺の恋人は本当に可愛いが過ぎる」 「~~~っ」 嬉しくて涙が滲んだ。 トルスの胸に顔をうずめてぎゅうぎゅうに抱きついたら、トルスが俺の頬にそっと手のひらを当てて、上へと導く。 「顔を見せて」 「トルス……」 僕を見下ろすトルスの表情があまりにも甘くて、胸がきゅ、と悲鳴を上げた。 「可愛い……」 ちゅ、ちゅ、とキスの雨を降らせながら、トルスが僕の服を剥いでいく。僕は熱に浮かされたような気持ちでトルスのキスに必死に応えた。 「うわ」 「……?」 急にトルスの身体がびくん、と揺れたから何かと思えば、いつの間にかズボンまで脱がされていたせいで、僕のもふもふしっぽがトルスの太ももをすりすりと撫でてしまっていたらしい。 「しっぽ、可愛い?」 「……可愛い。ローグのしっぽは感情表現豊かだからな。めちゃくちゃ可愛い」 言いながら、トルスはしっぽの付け根を優しく撫でて、そのまま僕のお尻の割れ目に指を這わせる。気持ち良くて幸せで、僕のしっぽはトルスの腕にふんわりと巻き付いた。 しっぽでスリスリされるの好きって言ってたもんね。しっぽの威力を試してみるのもいいかもしれない。 今夜も楽しくなりそうだ。 僕はトルスの首に抱きついて、猫みたいに体ごとスリスリと擦り付けた。 終

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