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兄の視点

学校から連絡があった。 菖綺(あやき)が倒れたらしい。 体育の時間に急に倒れたらしくて、担任の先生が電話してきてくれた。 電話が来た時、正直焦った。 冷静に対応したけど、本当は内心凄く焦っていた。 電話を終えて、画面を見ると、稜生(いつき)からも連絡来てた。 【まだ菖綺は気を失ってるけど焦るなよ】 って。 菖綺が倒れて学校から連絡があったと伝えると、まだ仕事が残っていたけれど、早退するのを許可してくれた。 急いで支度して学校に向かった。 急ぎはしたけど、稜生の忠告通り焦らないように気をつけながら。 ずっと心臓がバクバクしてる。 菖綺が居なくなりそうで怖い、、 もうあんな思いはしたくない。 少し前に菖綺がお弁当を残す量が日に日に増えてることがあった。 そのことについて聞くと、夏バテしてるだけって言われて、元々菖綺はそんなにたくさん食べる子ではない。 男子高校生にしては食べない方だ。 女子高校生よりも少ないかもしれない。 それぐらい食欲があまりなく、ご飯を用意しないと普通に食事を抜いても大丈夫なぐらい食に興味もない。 だから、体重も身長に対して軽いし華奢だ。 でも華奢って言われるのが嫌いなので、冬は割と着込んでたりするみたい。 普通に寒いからって言うのもあるけれど。 夏でもインナー着たりとか。 ただでさえ体重が軽くて心配だけど、過干渉になりすぎると菖綺は嫌がる。 干渉され慣れてないのもあって、干渉されるのを嫌がる。 だからなるべく干渉しすぎないように気をつけてるつもりだけど、俺からしたら菖綺が可愛すぎてしょうがない。 大事な弟だから。 菖綺は中学の時、夜遊びしてた。 夜遊びっていうか喧嘩してた。 殴り、殴られ、そんな喧嘩をしてた。 菖綺が俺に話しかけてくることはほぼなくて、兄らしいことをしてあげたことがない。 そんな菖綺が1度だけ頼んできたことがあった。 学校から電話がある時の緊急連絡先を俺(兄)にして欲しいと。 それにつけ加えて、迷惑だったら学校に来なくてもいいからって言われた。 迷惑だなんて思ったこと1度もなかった。 年の離れてたおかげで、学校からの連絡とかに俺が行っても大丈夫だった。 兄が緊急連絡先なのは教師も謎に思っていたから、親が忙しくて急には行けないことが多いから俺の方が行ける確率が高いからと言って納得してもらった。 でもどうしても行けない時もある。 その時は別日にしてもらったりしてどうにか俺が行ってあげた。 それが俺が唯一中学時代の菖綺にできる兄らしいことだった。 菖綺は自己肯定感が低い。 自分の不調を絶対に隠す。 本人が病院が嫌いで行きたくないからって思ってるけど、実際菖綺の病院嫌いは大変だ、だけどその根本にあるのは迷惑をかけたくないという気持ちが強いからって言っていた。 菖綺は自分が気づかないうちに自分を追い詰めてしまうタイプらしい。 俺は医者だけど精神科ではなくて、心理系を分かりはするし勉強するきっかけがあって勉強もしたけど専門医に比べたらまだまだだから、専門医に聞く。 菖綺は精神科に通ってた頃があった。 本当は今も通うべきなんだけど、いつからか勝手に通わなくなって、あまり言うと怒られるから言わないようにしてる。 菖綺の担当してた精神科医もなんかあったらまた通えばいいって言ってたし、「零軌(しずき)が通うべきだと思ったら通わせればいい」って、俺の判断に任せるらしい。 精神科医がそう言うから、それでいいんだろうって思う。 菖綺はさっきも言ったけど、自分が気づかないうちに自分を追い詰めてるタイプだから、自分が限界を超えていたことにも気づかない。 だから、無理しすぎて倒れたり、危ない状況になってたり、そういうことが割と多い。 そして今回も多分そう。 心配と怒りと悲しみとなんか色んな感情が混じって処理できない。 俺は菖綺にどう対応すればいい? とりあえず、早く菖綺のところに行きたい。 その一心で車を走らせた。

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