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危なっかしい兄弟

菖綺(あやき)寝た」 「寝たのか。俺が運転しようか?」 「ごめん、助かる」 「了解」 零軌(しずき)が菖綺を抱えたまま後部座席に乗り、稜生(いつき)が運転席に乗った。 零軌は菖綺を抱えた時に思った。 菖綺が嫌がろうと、心を鬼にして医者として判断しないといけない。 例え、泣かれても、嫌われても、菖綺の辛そうなところを見なければいけなくなっても。 寝てる菖綺の頭を撫で、強めに抱きしめた。 そんな姿を稜生はルームミラーを越しに見ていた。 「病院着いた」 「うん、ありがとう」 「零軌、菖綺預かろうか?ちょっと時間置いて来いよ」 「....あー、やばい?」 無理したように笑う零軌に稜生はそう言った。 零軌から菖綺を受け取って、代わりに車のキーを渡して、零軌は車の中に少しいるらしい。 [稜生side] 菖綺のことになると、零軌へのダメージもでかい。 零軌は別に自己肯定感が低いわけでもなく、精神的に弱くない。どちらかといえば、強い方だと俺は思う。芯がちゃんとあるタイプで、ブラコンといえど、しないといけないことはちゃんと弟だろうとする。 それに菖綺の泣く姿だって可愛いって言ってる、割とヤバめな変態ブラコン(ちょっと!酷くない!?By零軌) そんな零軌が珍しくダメージを受けてる。 前にもあった。 あの時も大変だった。 菖綺のそばにいたい零軌を菖綺から引き剥がすのが大変だった。 その後、離していた期間のせいか、菖綺と距離を取っていた零軌にも手を焼いた。 零軌はさっきも言った通り自己肯定感は低くないし精神的に強い方だけど、自分のことを大切にすることはできない。 できないというか、他人を優先してしまう癖がある。 人間というのは無意識に自己防衛し、自分優先になってしまう。それは人間のさがだからしょうがない。 だけど、零軌はそれが出来ない。 それと同時に、自分の精神状態も自分で分からない。 ストレスを感じにくい体質というよりも、ストレスを感じても本人は気づいてない。 自分に対して何がストレスなのか、それがわかってない。 だから、菖綺もだけど、零軌も危なっかしく、心配になる。他人のことはちゃんと見てるのに、自分には目を向けない。それを無意識に行っているから、癖ついてるんだろう。 これも過去のせいなのか、。 零軌は菖綺が過去のせいで未だに苦しめられていることをわかってる。でも零軌自身もその影響があるなんて思ってないんだろうな。他人のことをちゃんと見てるとは言ったけど、他人に対して興味があるわけではない。 仕事柄、注意して見てないといけないって言うのもあって、他人をちゃんと見てるわけで、零軌は他人に対してどうも思ってない。 危険があれば助けるけど、それ以外で他人に対して興味を持つことがほとんどない。本人は多分わかってない。 ある意味、誰とでも仲良くできる。 けど、一定の距離を保ってる。本人が気づいてないだけで。 他人に興味なければ、自分にも興味を示さない。だから、自分に負荷がかかってても気づかない。 それも過去の影響なのか、。 そんな零軌にとって、弟の菖綺はとても大切な存在。 だから、菖綺のためならなんでもできる。 だけど、それと当時に零軌自身にも何かしら負荷がかかっている。 もう少し自分のことも大切にして欲しいものだ。零軌が大切にしてる菖綺もそう思ってるからな。 菖綺も他人のことに関しては鋭い。 菖綺の場合は、自分の不調を気づきはするものの、それを他の人に言えない。助けを求めることが出来ない。 菖綺と零軌は他人をちゃんと見てるから同じように見えて真逆だ。 危なっかしい兄弟だから、第三者がちゃんと見ててあげないといけない。 そうしないと、どっちか、もしくはどっちも、心を壊す。 そう、言われた。 というわけで、幼馴染である俺が2人の監視役みたいなものだ。 無駄話をしてしまったな。 菖綺も自分のこと大切にしてくれよ。 零軌が悲しむぞ。 腕のなかの菖綺の頭を撫でた。 零軌が帰ってくる前に採血とか終わらせとくか。 菖綺も寝てるしな。

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