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零軌の感情

[零軌side] 稜生(いつき)菖綺(あやき)を預けて、車で少しひとりになった。 俺、酷い顔してるんだろうな。 正直、今自分が怒ってるのか悲しんでるのか、キツイのか辛いのか、よく分からない。 でも稜生の言うことは基本聞けって言われたからな〜 俺は自分自身のことがわかってないらしい。 それに関しても分からない。 俺にとって、菖綺が1番大事。 でも同じくらい稜生も大事。 稜生がいなければ、俺も菖綺も壊れてたかもしれない。そんな気がする。 俺は辛い過去を持ってるわけじゃない。菖綺の方が俺の何億倍も辛かったはずだから....。 そろそろ戻ろうかな。 怒られないよね?あんまり早く戻ると稜生から怒られる時あるんだよね笑 稜生の沸点って結構謎だよね〜。 でも、菖綺のそばにいたいから。 それに菖綺には頑張ってもらわないといけないこともあるし、お兄ちゃんがそばにいてあげないと寂しい思いさせちゃうからね! よし!いこう!! 車から降りて、鍵を閉めて、稜生と菖綺の元に向かった。 少し車の中でひとりになったから、なんか学校に菖綺迎えに行った時よりも落ち着いてる気がする! 怒りなのか、なんなのか分からない感情でずっと変な感じがしてたけど、それが無くなった気がする。 ようやくちゃんと菖綺のことを見れる気がする。 あ、もしかして菖綺のこと怖がらせてた可能性もある!?! えぇ、もしそうなら、辛いあやくんに無意識とはいえ、酷いことしちゃったなぁ。 あとで、目一杯甘やかしてあげないとね! その前に、検査とか処置とか、あとお説教もちゃんとしないと! 俺一人でもできる検査が一通り終わった頃に零軌(しずき)は車から降りて来た。 零軌は思ったより早く戻ってきた。 零軌は元から常に冷静タイプだから、落ち着くのも割と早い。 無理してないか心配になるが、本人は本当に落ち着いたから戻ってきてるわけで、顔を見ればわかる。 けど、隠すのも上手いからな。 「おかえり」 「うん、ただいま!ありがとね!」 「全然。」 にこにこできてるなら大丈夫か。 普段からにこにこしてる人ほど我慢してるとか言うけど、本当にそういう人もいる。 だが、本当に怖いのは普段にこにこして人ほど、にこにこしてない時が怖くて心配になる。 零軌は特にな。 本人自覚なしだし。 「?」 「手のかかる兄弟だな」 「え?急だね笑いつも感謝してるよ、稜生」 「今度菖綺が元気になったら、飯食べに行こ」 「うん!あやくんはあんま喜ばないかもだけど笑」 「そうだな、俺に奢るついでに1日菖綺と出かけよ」 「そうだね!!」 「俺と菖綺で」 「え?俺は?」 「金だけくれ」 「え?最低」 「ごめんって、でも菖綺とデートしたい」 「ふざけんな、俺しかデートできない」 「零軌はデートできるんだ笑」 「もちろん!」 「零軌がエスコートしそうで菖綺にされてそうだよな」 「それはそう!あやくんかっこいいからね!!あやくんと兄弟じゃなかったら、恋人だね絶対!」 「絶対なんだな笑 零軌の願望だろ笑」 「まぁね!」 そんなに無駄話....いや、俺たちにとってはこれも大切な会話、をしながら、菖綺の検査結果を待った。 採血の結果、案の定貧血と栄養失調で数値が悪く、入院させることにした。 菖綺が嫌がるのは承知の上だし、こんだけ数値が悪ければ入院せざるを得ない。 それに零軌も医者だから、ずっと菖綺を見てれるわけじゃない。 だから、入院した方が菖綺を監視してくれる人がいるから安心だろう。 零軌も仕事の合間に様子見にこれるし。 ただ、菖綺の説得は大変だ。 今は寝てくれてるけど、起きた時、落ち着いてくれてたらいいけど。 採血も点滴する時も、ちょっと嫌な顔はしたけど、大人しく寝ててくれたからすぐに終わらせることが出来た。 今も寝てるから、その間に入院の準備をしに、零軌は1度家に帰る。その間、俺は菖綺を病室に連れていき、菖綺のそばで零軌を待った。

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