37 / 37

過呼吸と検温

目から雫が落ちた。 1度落ちると、ポロポロと止まらなくなった。 顔をあげれない。 兄貴の顔も稜生(いつき)の顔も見れない。 泣きたくないのに。 泣いても何も変わらない。 早く泣き止まないといけないのに。 そう思えば思うほど涙は止まらなくて、嗚咽も出てきた。 酸素が上手く吸えなくて、 息苦しくなってきて、 過呼吸になった、、 さっきまでとは違う、苦しくて生理的な涙も流れた。 指先が冷たくて寒気も出てきた。 「ヒッ、うぅ、クッ、ハァッ、うぅ、フッ、ハッ、ウッ」 「菖綺(あやき)、落ち着いて。深く息吸って、吐いて。もう1回」 兄貴が俺を抱きしめてくれて、背中を叩きながら呼吸の指示をしてくれた。 冷たくて感覚があまりなくなった指先で必死に服を掴んで、兄貴にしがみついた。 兄貴の声に合わせて呼吸して、ようやく落ち着いてきた。 落ち着いてくると、どっと疲れが出てきて、兄貴に寄りかかった。 なんかぼーっとする。 くらくらして、体に上手く力が入らなくて、座ってるのもきつい。 兄貴に身体を預けると、兄貴はいつもの笑顔で俺の顔を見て「頑張ったね。疲れたから寝よっか」って言ってくれた。 さっきまでの冷たい兄貴じゃなくて、いつもの兄貴に戻ってたことにひどく安堵して、瞼の重みに逆らうことなく、目を閉じた。 [零軌side] 「今は何も考えずに寝ちゃいな。おやすみ、菖綺。俺も一緒にいるから大丈夫、大丈夫だよ。」 そう言って、菖綺をソッと強く抱きしめた。 さっきまで冷えてた体は今は熱を発していた。 抱き抱えて、ベッドに寝かせ、再び点滴を入れた。 今は寝てるからとりあえず脇に体温を挟めて測って、37.9℃と表示された。 菖綺が起きたら、直腸から体温を計って、38.5℃過ぎてたら座薬を入れよう。 ある程度熱が下がったら食事指導しないとね。 頑張ろうね、菖綺。 起きると案の定熱は上がってるみたいで、寝る前よりも結構高かった。 まだ入院することを嫌だと言ってるが、発熱してるのとまだ疲れているため、ぐったりしていた。 が、今から直腸から体温測ると言ったら、抵抗してきた。 どこにそんなに体力が残っているのか、ちょっと笑ってしまう。 「菖綺熱上がるから大人しくしてて」 「いやだッ!なんでおしりに入れるんだよッ!脇でいいじゃん!」 「直腸の方が正確なの」 「やだッ!」 「笑」 必死に抵抗しててあまりの可愛さに、笑ってしまった。 見てる稜生も笑ってた。菖綺は必死だから笑っちゃいけないけど。 稜生に菖綺の腰を抑えてもらって、下半身だけは動かないようにした。 「うぅっ、気持ち悪いぃぃ」 「もうすぐ終わるから」 「早く抜けよッ」 「はい、終わり」 測り終えると菖綺は布団に潜ってしまった。 息苦しくなるからやめて欲しいけど、今は口出ししないでおく。座薬入れないといけないし。 案の定熱は高くなっていて、38.8℃と表示されていた。 高熱なのに、よく抵抗するなぁ笑。 熱が上がってることは予想してたので、体温計とともに座薬も持ってきていた。 取りに行く手間が省けてよかった。 よし、菖綺にはもう少し頑張ってもらわないとね。

ともだちにシェアしよう!