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寂しさ

[菖綺side] 「菖綺(あやき)、食べないの?」 「....た、べる」 食べよう、とは思うけど箸が進まない。 お腹いっぱいだし.....。 でも、怒られたくない....。 隣に座ってる兄貴の裾を控えめに引っ張った。 「ん?もう食べれないの?」 「....ぅん」 「そっか。今日はもうやめとこうか。」 「ぅん」 「明日から食事指導始まるけど、頑張ろうね?」 「....ぅん」 「(不安で嫌なんだろうな笑)よしよし」 今日は残すことを許可してくれた。 結局食べれた量は3分の1程。 明日から食事指導が始まるって思ったら憂鬱でしかない。 「食器持っていくね!」 「ありがと」 兄貴もう帰るのかな.....。 ひとり....になるのか。 さびしい....って、兄貴仕事終わりで疲れてるんだから早く帰って休まないといけないだろッ、。 今まで1人でも平気だったじゃないか。 1人でも、独りでも、 平気....平気だ....。 ギュッ 「?」 そう思ってたのに、いつの間にか兄貴の裾を掴んでしまっていた。 「どうしたの?」 「あ、いや、....ごめん、なんでもない」 兄貴も忙しくて疲れてるのに止めてしまった。 申し訳なくて、なんか恥ずかしくて、布団に潜った。 兄貴は少しの間、動く気配はなくて、でも俺が布団に潜って少しした後、ドアが開く音がして、病室を出たのがわかった。 寂しい気持ちを抱えながら、寂しくない、独りで平気と自分に言い聞かせて、布団の中でうずくまるような体制になった。 うずくまるようにして寝ることがよくあった。 今は兄貴が一緒に寝ようとか言ってくるから、うずくまるスペースもないし、寂しいと思う気持ちも少なくなって、うずくまって寝ることは減った気がする。 うずくまって寝ると、何故か落ち着く。 安心するんだ。 その体勢のまま、いつの間にか眠りについた。 [零軌side] ガラガラガラ 「あやー?」 食器を置いて戻ってくると菖綺は寝てた。 もう退勤の時間だし、食器置いてくるついでに帰りの支度をしていたら少し時間かかってしまった。 病室を出る前に菖綺に裾を引っ張られた。 びっくりしたけど、嬉しかった。 でも菖綺は自分の感情を伝えることを拒む。 何も言ってくれなくて、ただ謝って少し恥ずかしそうに布団に潜ってしまった。 盛り上がった布団を少し眺めていたけど、まぁまた戻ってくるつもりだったし、その時に話を聞いてあげようと思って、1度病室を出た。 だが、戻ってきたら菖綺は寝ていた。 布団を被ったままだったので、息が苦しくなると思って、布団を肩まで下ろした。 菖綺はうずくまって寝ていた。 菖綺に一緒に寝ようって誘うけど、毎回一緒に寝てくれる訳もなく、毎回一緒に寝れる訳もなく、菖綺が1人で寝てる時も多々ある。 そういう時は、菖綺が寝たぐらいに様子を見に行って、寝顔を少し眺めるのが俺の楽しみでもある訳だが、たまにうずくまって寝ている時がある。 その時はどこか、悲しくなる。 全員が全員そういう訳では無いと思うけど、うずくまって寝るのには理由がある。 うずくまって寝る人の心理は、精神的なストレスや疲労、または心理的な防御や安心感の希求が関係していると考えられる。これは、外部からの刺激や心理的な負荷から身を守ろうとする「守りの姿勢」であり、特に強い心理的ストレスにさらされている場合に起こりやすい。 また、本能的に急所である内臓を守ろうとする動物的な本能の表れでもある。 多少知識はあるものの、俺の専門は心理ではない。 だが、菖綺のことを守りたくて助けたくて、心理の勉強をあの時から始めている。 だから、専門医ではないものの知識はある方がと思う。 それを知っているから、そういう姿を見ていると酷く悲しくなってしまう。 俺が悲しんでも菖綺の辛さが悲しみが寂しさが無くなる訳では無いのに....。 そういう思いを少しでも減らすために一緒に寝ようと誘っている。 まぁ、普通にあやくんと一緒に寝たいってのが1番の理由だけど笑 寂しかったんだろうな。 ごめんね、1人にして。 お兄ちゃんが一緒にいるから。 大丈夫だよ。 一緒に頑張ろうね。 俺の大切な弟。

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