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芽生えた想い①
その週の、日曜日。特に頼まれてもいないのに、大路君のために勝手に焼いてしまったサブレ。
……しかもプレーンだけでなく、チーズ味と、チョコレート味の3種類も。
それを前に、ちょっと途方に暮れる僕。
だって、嬉しかったのだ。僕の作ったスイーツを、あんなにもしあわせそうに彼が食べてくれて。
なのであの翌日ではなく、週末まで大路君のためにお菓子を作るのを我慢した僕を、自分で褒めてあげたいくらいだ。
……だってすぐにまたお菓子を作って渡したら、さすがにちょっと気持ち悪がられてしまいそうだし。
とはいえ心の中では、本当は分かってもいた。
大路君はそんなこと、絶対に思ったりしないって。
それでもやっぱりこれまでまったくといっていいほど接点のなかった彼と、急激に距離を詰める勇気が僕にはなかった。
だからこうして土日を挟むことで数日空けられたのは、良いクールダウン期間になったかもしれない。
匂いが混ざってしまうのはどうしても嫌だったから、3種類のサブレを、それぞれ別の袋に詰めていく。
ラッピングも前回同様軽く施そうかとも思ったけれど、それだとなんだか特別感が出てしまいそうだったからあえて透明のビニールに入れ、それをシールで閉じるだけにしておいた。
オリジナルの、撮影用に作ったオーダーメイドのおしゃれな包材。
それを使おうかとも一瞬考えたけれど、りとるマニアの彼は、絶対にその事実に気付いてしまうに違いない。
そのためわざわざ袋をとめるためのシールを買いに行ってしまった僕には、自分でも何をやっているんだかと呆れてしまうけれど。
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