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君についた嘘⑥

 バターや砂糖の量も一般的なケーキと比べたら少なくてすむため、カロリーを気にする人たちも比較的口にしやすいという点も人気の秘密のひとつだろう。  そしてこのケーキには、欠かせないものがある。  それはクリームチーズをたっぷり使った、フロスティングだ。  これがあるとないとでは味が段違いだから、少し手間と費用は掛かるものの、ぜひとも作りたい!  皮つきのままにんじんをおろし金ですりおろしながら、事前に考えていたレシピを脳内で整理していく。  すると不思議なことに、さっきまでの悩みが嘘のように頭の中がクリアになっていくのを感じた。 ***  よし、できた!  完成したばかりのフロスティングにスプーンをさし、ひとさじすくう。  それを口元に持っていき、その味を確認する。  ほんのり酸味を感じさせる、爽やかな風味。  こちらは甘さをやや控えてあるから、キャロットケーキとちょうどいいバランスに仕上がった気がする。  ……やっぱり僕、天才なのでは?  普段の自分からは想像もできないほどの、自信を僕に与えてくれるもの。  それが、スイーツ作りだ。  だから幼い頃からパティシエを将来の夢にしていたけれど、意外と配信者としての活動のほうが、人見知りな僕には合っているのかもしれない。  焼き立てのケーキの上に、完成したばかりのフロスティングをとろりとたらす。  この瞬間が一番ドキドキするけれど、逆に一番ワクワクもする。 「キャロットケーキの、完成です! フロスティングという言葉はあまり馴染みがないかもしれませんが、このクリームがあるとないとでかなり差が出ます。なのでぜひ皆さんも、チャレンジしてみてくださいね。今週もご視聴いただき、ありがとうございました!」  さっきまでの沈んだ気持ちが嘘のような、明るい声色。  いつものように完成したケーキのアップ画像を撮影してから、撮影停止のボタンを押した。 自分でも本当に現金だなと思うけれど、やっぱりスイーツ作りはいつだって僕の気持ちを明るく、軽くしてくれる。  すいーつの魔法使い りとるという設定も、そこには少なからず関係しているのだろう。  なのに自身の分身のような存在に嫉妬にも似た感情を抱いているという、不可解な状況。  もし僕にほんの少しの勇気があれば、りとるは実は僕なんだよって、大路君にも言えるのだろうけれど。

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