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ネガティブな感情③

 その日の夜。予定通り抹茶味のサブレを作りながら、撮影に臨んだ。  だけど気分は、どうしても沈んだままで。僕はみんなの人気者、スイーツの魔法使い りどるの仮面を被りきれないでいた。  ……顔出しなしでの配信だから、それに気がつく人なんて、きっとどこにもいないけれど。 「シュガーパウダーを上から軽くふりかけたら、抹茶味のサブレの完成です! 実は今回の、このサブレ。めちゃくちゃ、自信作だったりします。なのでぜひ皆さんも、作ってみてくださいね。本日もご視聴いただき、ありがとうございました!」  無理やり明るい声色を作り、いつものように締めの言葉を口にした。  撮影停止のボタンを押してから、ふぅと小さくため息をひとつ吐き出す。  いつもならお菓子を作ったり、配信用の動画を撮っている間だけは、気持ちをうまく切り替えることができるのだ。  なのに今日は、僕の自信の源であるりとるの存在そのものが、僕の心に影を落とした。  りとるだって僕の一部のはずなのに、大路君の心をとらえて離さないりとるのことが、うらやましくて仕方がない。  お菓子を作るワクワクを、少しでも多くの人に知ってほしい。  誰でも手軽に作ることのできるスイーツで、みんなを笑顔にしたい。  それが僕が配信をはじめた、一番の目的だった。  正直なところ、ここまでたくさんの人たちに見てもらえるようになるとは思っていなかったけれど。    ……なのにこんな気持ちのままで配信なんて、続けていていいのだろうか?

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