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ネガティブな感情②
「うん、いいと思う! 作ったサブレが余ったら、またいつでも引き受けるから」
ひとりで食べるにはじゅうぶんな量を渡したはずなのに、どうやらそれはすでに、すべて彼の胃袋に収まってしまった後らしい。
だけどこうして純粋に喜んで食べてくれる彼のような存在は、基本的に自分にたいして自信のない人間にとって、とても大切でありがたい。
だから僕は、今度は心からの笑顔で答えることができた。
「うん、そうだね。うちにはまだ昨日作った分が残っているはずだから、また明日にでも渡すようにするよ」
「あざす! うはー、楽しみ!」
素直に喜びを言葉と表情で表現してくれる彼を見て、思わずクスクスと笑ってしまった。
でもそこで、そういえばとふと気付いた。
せっかく大路君も僕の作ったサブレを大絶賛してくれていたはずなのに、ちゃんと聞くことができなかったなと。
……いくら動揺していたからって、あの態度はさすがに失礼だったかもしれない。
ただでさえ人気の高い、クラスの王子様的存在の大路君。
しかも僕は、彼と同じ男なのだ。
だから僕がいくら好きになったとしても、この想いが彼と通じ合うことはきっとない。
でもそんなのは、勝手な僕の事情でしかない。
そのため急にあんな素っ気ない態度を取られたら、誰だって不快になるに違いない。
彼に好かれたいだなんて、そんな贅沢なことを望むつもりはもちろんない。
それでも彼に、嫌われるのだけは嫌だ。
「……りとるが、うらやましいな」
思わず口を、ついて出た本音。
だって彼は、僕であって僕じゃない。
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