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ネガティブな感情①

「よぉ、理人。ちょうどよかった! 今帰り?」  学校からの、帰り道。ちょうど同じく帰宅途中だったらしき太陽に、遭遇した。 「あぁ、太陽。うん……」  いつも以上にどんよりとした空気を垂れ流す僕の姿を見て、一瞬顔を引き攣らせる太陽。  それに気付いたから、あわてて笑みを顔面に貼り付けた。 「そうだね、ちょうどいいタイミングだったみたい。昨日渡したサブレ、もしかしてもう食べてくれた?」 「食わいでか! 今回のも、めちゃくちゃうまかった……」  その味を反芻するように、うっとりとした顔で答える太陽。  それを見て、さっきまでの重かった気持ちが少しだけ軽くなった気がした。 「ほろほろで、サクサクで、ほろ苦で。お前が作ったのを食ったら、まじで店で売られてるのを食えなくなるわ。やっぱスイーツの魔法使い りとる様の作るスイーツは、最高だな!」  最大級の、賛辞。それを聞き、地味で陰キャな僕自身ではなく、スイーツ研究家であり配信者、りとるとしての自信は取り戻すことができた。 「そっか、それはよかった。だけど声のボリュームは、もう少しだけ下げてよね」  今目の届く範囲には、僕と太陽のふたりしかいないように思う。  だけど、よくいうではないか。壁に耳あり障子に目あり、と。 「……ごめん、ちょっと興奮しすぎた」 「ううん。そんなに喜んでくれて、僕も嬉しいよ。いつも味見してくれて、ありがとう。なら今日の夜もう一度作って、明日サイトにあげられるようにしようかな」

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