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魔法にかけられて〜Side清雅〜⑥

 これまでまったくといっていいほど絡みのなかった佐藤にさすがに連続でお願いするのは図々しすぎると思うし、それに作ってくれるのは彼本人ではなく母親なのだ。  もう二度と食べられないかもしれないと思うと、さっきまで幸せだった分、ダメージもでかい。  そんなふうに、ちょっと落ち込んでいたというのに。  その翌週の、月曜日。彼は俺が頼むまでもなく、手作りのサブレを俺にプレゼントしてくれた。  というのも彼の母親に俺の感想を伝えてもらったところ、たいそう喜んでくれたのだそうだ。  むしろキモがられても仕方がないかもしれないと思うほどの熱量で語ったのが、かえって功を奏したらしい。  だけど手渡された際、ひとつ条件をつけられてしまった。  今回は生菓子じゃないから、家まで食べるのを我慢すること。  まるで小さな子どもに諭すように言われてしまったが、これに関しては仕方あるまい。  なぜなら俺は、前科持ちだからである。  なのでその条件は、素直に飲むことにした。    とはいえもらいっぱなしというのはさすがに申し訳ないから、そのうちなにかお礼の品を用意したほうがいいかもしれない。  スイーツ作りが好きな人なら、やっぱりそれに関するものがいいだろうか?  それともすでにひと通り持っているはずだから、今さらもらっても困るだろうか?  お礼の品を渡すのは彼の母親に対してだというのに、気付くと俺は、なぜか佐藤が喜びそうなものばかり考えてしまっていた。  そういえば彼は今日、目の下に大きなクマができていた。  もしかしたら何か、大きな悩み事でもあるのだろうか?  ……だったら俺に、相談してくれたらいいのに。  そこまで考えて、苦笑した。  なんであいつが俺なんかに、悩み事を打ち明けてくれると思うんだよ?  ……俺と佐藤は、友だち以下の存在だっていうのに。  改めてその事実に思い至り、その瞬間なぜか胸がチクリと痛んだ。

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