33 / 46
ネガティブな感情⑤
僕を支えてくれる人たちの協力があったおかげで、今のように楽しみながら活動ができている。
「よし! いつまでも、うじうじと悩んでいても仕方ない。今できることを、やっていかなくちゃ!」
次の配信用のお菓子のレシピを考えるため、命の次に大事といっても過言ではない、自分専用のレシピノートを開いた。
ページをパラパラとめくりながら、何を作ろうかと考える時間。
それは至福の時なのだけれど、集中しすぎたせいで寝不足になることもしばしば。
ただでさえ昨夜はほとんど眠れなかったから、早めに寝ようと思っていたはずなのに。
……明け方近くまで次のスイーツのテーマを考えるのに没頭し過ぎたせいで、気付けば僕は机の上に突っ伏すみたいにして、寝落ちてしまっていたのだった。
***
その週の、木曜日。学校に着くと大路君は珍しくひとりで席に座ったまま、熱心にスマホで動画を見ていた。
もしかしたらと思い、こっそり彼の背後にまわってその画面を確認する。
するとそこに映し出されていたのはやはりというべきか、魔法使い りとるが抹茶のサブレを作る動画だった。
なんともいえない微妙な気分になり、そっとその場から離れようとする僕。
だけど僕の存在に気がついた大路君は、いつもみたいにまばゆい笑顔で挨拶の言葉を口にした。
「おはよう、佐藤!」
だから僕も、あわててそれに答えた。
「おはよう、大路君。……りとる君の動画を、みていたんだね」
スルーするのもかえって変な気がしたから、自分からその話題に触れた。
ともだちにシェアしよう!

