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ネガティブな感情⑥

「うん。昨日から、何回もみてる」  それから彼は、珍しく少しだけ暗い表情を浮かべた。  それを不思議に思い、その理由を聞いてみることにした。  僕ではなんの役にも立たないかもしれないけれど、それでも話すだけで気持ちが軽くなることがあると、つい最近の経験からよく知っているからだ。 「どうかした? 大路君。なんだか、浮かない顔をしてるみたいだけど……」  ハッとしたように見開かれた、彼の深い青色の瞳。  やはり触れるべきじゃなかっただろうかと後悔し始めたタイミングで、彼は困ったように笑った。 「俺が浮かない、というか。うーん……。なんとなくだけど、りとる君が元気がないみたいで」  その言葉に、思わず息を呑む。  まさかそんなことまで、画面越しに伝わってしまっていただなんて。  ……配信者、失格じゃないか。情けない。 「そうかな? 大路君の、気のせいじゃない?」  激しく動揺しながらも、当たり障りのない返事を返した。  だけどそれに納得がいかなかったのか、大路君はちょっと不快そうに答えた。 「絶対、気のせいなんかじゃねぇよ! 俺のりとる君愛、なめんな。りとる君、大丈夫かなぁ……」  後半は心から心配そうに、ひとりごとみたいに彼はつぶやいた。  りとるの失態に、心を痛める大路君。  それを見て申し訳ないと感じるのと同時に、僕の分身であるりとるへの嫉妬で心が真っ黒に塗りつぶされていくのを感じる。  そして、この日を境に。……ずっと続けていた週一の配信も、情けないことに僕は休みがちになっていってしまった。

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