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スイーツよりも好きなもの〜Side清雅〜②
それにしても、味付けは違えどなんてタイムリーな!
まさかの偶発的コラボレーションに、ひとり歓喜した。
野郎とは思えないくらい、細くしなやかな指先。
ついさっきまではただの粉だったはずのボウルの中身が、あっという間にしっとりとした、そしてほんのり艶のあるサブレ生地へと変化していく。
りとる君の動画を見るたび、いつも思うのだ。
……本当に彼は、スイーツの国の魔法使いなんじゃないかって。
もちろんそんなことはありえないし、彼も普段はどこにでもいるような平凡な男子なのかもしれないという現実を、ちゃんと俺だって分かってはいるけれど。
しかし視聴している中で、違和感を覚えた。
というのも今日のりとる君からは、いつものように自分自身がワクワク楽しんでいる感じが、まったくといっていいほど感じることができないのだ。
最初はいつもみたいに、まるで魔法みたいに完成していくスイーツを楽しんで見ていた。
だけど彼の様子がおかしいことに気付いてからは、こちらまでなんだか落ち着かない気分になってしまった。
りとる君に、いったい何があったんだろう?
当然のことながらただのいち視聴者でしかない自分にはどうすることもできないし、その理由を知ることすらもかなわないけれど。
***
その翌日の、木曜日。
なにかりとる君の変化の原因となった出来事の糸口を見つけることはできないものかと、もう学校に到着してそろそろ授業も始まろうかというのに動画を食い入るように見つめる俺。
するとその背後を、佐藤が通りかかった。
なのでそれに気付いたから、いつもみたいに俺のほうから声をかけた。
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