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スイーツよりも好きなもの〜Side清雅〜③

「おはよう、佐藤!」  「おはよう、大路君。どうかした? なんだか、浮かない顔をしてるみたいだけど……」    あまりにも真剣に、食い入るみたいに動画をみていたせいだろう。  なんて答えようかと迷っていたら、彼は情けないくらい眉尻を下げ、一歩後ずさった。  人見知りで臆病な佐藤がようやく俺に対して気を許してくれてきたというのに、これでははじめて話した頃に逆戻りじゃないか!  それに気付いたから、苦笑しながら答えた。 「俺が浮かない、というか。うーん……。なんとなくだけど、りとる君が元気がないみたいで」  数秒の、沈黙。それから佐藤は、困ったように笑って答えた。 「そうかな? 大路君の、気のせいじゃない?」  おそらく彼は、俺のことを気遣ってそう言ってくれたのだろう。  なのにそれに納得がいかなかったから、子どもみたいな八つ当たりをしてしまった。   「絶対、気のせいなんかじゃねぇよ! 俺のりとる君愛、なめんな。りとる君、大丈夫かなぁ……」  だけどこの時の俺は、ただりとる君の様子だけが心配で。  ……佐藤が俺の発言に心を痛め、傷ついていただなんて、ほんの少しも気付いてはいなかったんだ。  そのため午後になり、さすがにちょっと冷静さを取り戻した俺は、また当たり前みたいに佐藤に声を掛けようとした。  だけどこの日を境に、佐藤は目に見えて俺を避けるようになってしまった。  当然といえば、当然の反応だ。  だってあいつは俺の不安を軽くしようとして、ああいう風に言ってくれたはずなのだ。  なのに俺はりとる君のことが心配で心配で、とてつもなく身勝手な八つ当たりで繊細な彼を傷付けた。  でも距離を取られ、ショックだったのは俺だけだったらしい。  休憩時間。隣のクラスの中西と、楽しそうに笑う佐藤の姿を目にした。

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