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スイーツよりも好きなもの〜Side清雅〜④
中西の手にしっかり握られているのは、俺がもらったのと同じ紙袋。
だからきっとその中身は、佐藤のお母さんが作ったスイーツに違いない。
なのに俺がショックを受けた理由は、スイーツをもらえなくなったことなんかじゃなかった。
……彼のあの楽しそうで幸せそうな笑顔が、俺ではなくあの男に向けられていることだった。
そしてそれは俺にとって、想像以上にショックな出来事だったみたいで。
……何も悪くないはずの彼に対してなんであんなにも酷い態度をとってしまったのだろうと、かつてないほど激しい後悔の念にとらわれた。
翌週の、水曜日。
沈んだ心を無理やり浮上させるべく、いつものように帰宅するなりパソコンへと向かった。
だけど、この日。『PM3時の魔法使い』は更新されることのないまま、日付が変わってしまった。
りとる君の配信を見つけてから、およそ1年半が経つ。
更新は毎週規則正しく行われていたはずだから、こんなのははじめてのことだった。
だから足りないものを補うみたいに、過去の動画を再生しようとしたけれど、やっぱりなんだかものたりなくて。
これ以降りとる君の動画の配信ペースはガクンと下がり、月に一度程度、気まぐれに更新されるだけになってしまった。
やっぱり彼の心境に影響を与えるような、なにか大きな出来事があったのかもしれない。
なのにそれを案じる気持ちよりも、佐藤に避けられるようになった衝撃とダメージのほうが大きくて。
俺はあれだけ熱心な信者だったくせに、更新の可能性がある水曜日以外は彼の動画をみなくなってしまった。
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