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それは、ケーキよりも甘い②
大路君との関係は、あれ以降すっかり変わってしまった。
というのも僕は彼を避けるようになり、彼もわざわざ避ける人間を追うような真似、しないからだ。
僕が積極的に関わろうとしなければ、あっさり終わる関係。
その現実を突きつけられて、ショックじゃないといえば嘘になる。
それでも自分から彼との関係を終わらせたようなものだから、どうしようもない。
なのにクラスが同じだから、嫌でもあのキラキラした王子様みたいな彼は、僕の視界に入ってくる。
そのせいで未だにズルズルと、気持ちを引きずり続けているというのが現状だ。
とはいえそれもきっと、来年になり、クラスがかわれば終わるはず。
そしていつか自然と、この忌々しい恋心だって消えてなくなるに違いない。……そうじゃないと、困る。
***
「大路の誕生日って、クリスマスイブなんだ? さすがは、王子様だな!」
「王子様って、お前まで言うな! それにイブが誕生日って、あんまいいもんでもないぞ? クリスマスケーキばっかで、バースデーケーキって俺、食ったことねぇもん」
彼と仲の良い友だちたちの会話が、自然と耳に入ってきてしまった。
もう忘れなきゃと思うのに、こうして自然と情報を集めてしまうのはきっと、彼のことがいまだに好きで好きでたまらないからだろう。
実際に彼と話した回数なんて、両手の指の数で足りるくらいのはずなのに。
だけどこの頃になると、少し諦めにも似た気持ちが生まれ始めていた。
どうせ忘れることができないなら、もういっそ忘れないでおこう。
時間が解決してくれるその時までは、この初恋を堪能しよう。
でもそうなると、現金なもので。
この気持ちを受け入れてもらえることはなくても、大路君に伝えたいと思うようになった。
だけどいつ、どうやって伝えるか?
そればかりを、考えるようになった。
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