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それは、ケーキよりも甘い③

 そしてそんなタイミングで大路君の誕生日がクリスマスイブなのだと耳にしたものだから、これだ! と思ってしまった。  どうせ振られるのはわかっていても、少しくらいは彼の心に爪痕を残したい。  そして僕の想いが本物なのだということを、彼にきちんと伝えたい。  となるとその手段はやはり、スイーツ作りしかないわけで。  ……僕は彼に想いを伝えるべく、ある計画を立てることにした。 ***  クリスマスイブ、当日。  僕はいつものように勝負服ともいえるエプロンと三角巾を身に着けて、午後3時を前にカメラの前に待機中だ。  とはいえ今日は、撮影のためではない。  はじめて生で、配信しようと考えている。  緊張しやすい性格だから、これまではいくらリクエストされようとも頑なに、録画でのみ配信を続けてきた。  だけだそれだと、きっと僕の彼への想いは伝わらないと思う。……だから。  作業台の上に並んだ、ケーキ作りのための材料。  今日はクリスマスイブだけれど、僕が作るのはクリスマスケーキじゃない。  大路君のためだけに作る、バースデーケーキだ。  いつもの配信では、なるべく安価で良質に、そして手軽なスイーツ作りをモットーにしているが、今回だけは特別だ。  いつもよりも多少高くても、良質な材料を。  そしてこれまでは簡単であることを最優先してきたけれど、今回だけは見た目にももっとこだわって作りたい。  時計の針が、15時ちょうどを指したタイミングで。  配信開始のボタンを、僕はドキドキしながらはじめて押した。 「みなさん、こんにちは。生配信では、はじめましてですね。スイーツの魔法使い、りとるです」   もちろん顔出しはしていないが、それでも生配信というだけで緊張で声も手も震えそうになる。  だけどきっと見てくれているであろう大路君に、少しでもいい姿を見せたい。  他の視聴者のみなさんには申し訳ないけれど、今日だけは、彼のためだけに。

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