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それは、ケーキよりも甘い⑧
「佐藤は、俺のことが好き。俺も、佐藤のことが好き。両想いなんだから、お付き合いしましょうって流れが普通じゃね?」
あまりにも意外な言葉に、再び困惑する僕。
そんな僕の手をあきれたようにつかみ、そのまま彼の家へと連れ込まれた。
促されるがまま靴を脱がされ、ソファーに座らされる僕。
「今日は俺の両親、クリスマスデートでいないんだよね。かわいいひとり息子の誕生日だってのに、ひどくね?」
拗ねたように、唇をとがらせる大路君。
「あぁ、うん……。たしかにそれは、ちょっと酷いね」
僕が素直に答えると、彼はクスリと笑った。
「だよな? だからさ、佐藤。これからお前が、祝ってよ。俺の、誕生日」
いうが早いか、キスで今度は唇をふさがれて。
これまで悩んでいたのが馬鹿らしくなるくらい、グダグダに彼に甘やかされてしまった。
***
「本日もご視聴いただき、ありがとうございました。また来週も、よろしくお願いします!」
いつものように締めの言葉を口にして、撮影停止のボタンを押す。
するとそれまでその様子をすぐそばで楽しそうに見ていた清雅君が、ソファーから立ち上がった。
「配信、お疲れ様! 今日のも、すげぇうまそう。……理人、もう食べていい?」
できたてのパンプディングを前にきゅるんと青い瞳を輝かせ、僕の愛しい恋人が問う。
だから僕はいつもみたいに、クスクスと笑いながら答えた。
「もちろん! あったかいうちに、食べよ」
あれからいくつもの季節が流れ、僕らは大学生になった。
だけどこの夢のような魔法は、今でも続いている。
そしてこれからもきっと、ずっと、永遠に……。
【了】
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