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「そうですね。ですが、そういう時の大好きという気持ちは大河様よりかは控えめにしないと、それこそご機嫌を損ねてしまいですけどね」
「そうなんですよね⋯⋯。私ったらついその気持ちを全面に出してしまうせいで、大河様の怒りを買ってしまうんですよね⋯⋯」
「ですけど、安野さんのしていることって姫宮さんに害を与えることじゃないですから、あれは単にお母様を取られて怒っている感じかなと思いますけどね。御月堂様と同じような」
「あー⋯⋯。御月堂様と⋯⋯って、どっちにしたって私に対して良く思ってないってことじゃないの!」
姫宮のことをこんなにも敬愛しているのに、大河にとってはそのような気持ちも向けないで欲しいということになる。なんて救いようがない。
「御月堂様の場合は、安野さんとはまた違ったものですから、そのうち大河様も理解し、仲良くしてくれるかと思います」
上山が言ったことを少し考えた。
「お二人が仲良くしている姿を見るのは、自分のことのように幸せに感じられますが、現実的に考えると難しく思ってしまうのがなんとも⋯⋯」
安野が濁した言葉の続きを、三人は言わずとも分かったような顔をし、それから神妙な顔つきになった。
片や大企業の社長で、片や一般の人だ。
そして今回の会長が直接会いたいと申し出たことから、このまま引き裂かれてしまう可能性があるのではと嫌な想像をしてしまう。
第二の性に対する差別は完全には消えたわけではない。だから、姫宮も二言目には自分が悪いという旨を言うほどでそれが現実を突きつける。
ただ二人の幸せを願うだけでは乗り越えられない問題。
「私達の立場はあくまで姫宮様の身の回りをお世話をすることです。お二方の幸せも願うのは自由ですが、それ以上の行動はなさいませんように」
「わっ、分かって、いますけど⋯⋯」
思わず言ってしまったが、そう釘を刺されてしまうことを安易に予想されてしまうのもまた事実だった。
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