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十四話 足フェチ

フェチ全開の表現があります。 逆にこれ以上ヤバい感じにはしないのでこれを越えたらあとは大丈夫なはず!!(笑) -------------  風呂は好きだ。身体の芯まで温まることが出来るし、リラックス出来る。湯船でプカプカしていると、時間を忘れるようでもある。 (ミストサウナ……良いな)  すっかり満足して浴室から出た俺は、着替えようとして、手を止めた。入浴前に脱いだ服も下着も、置かれていない。その代わりに、バスローブが置かれていた。よく見れば洗濯機が回っている。どうやら、洗ってくれたらしいが―――。 「えっ……。これ着ろって……?」  ペラペラの、薄手のバスローブ。良いものらしく、触れればしっとりとしていて、肌に吸い付くようだ。  げんなりしながらバスローブを羽織り、バスルームから出る。リビングでは雨下が、クラシック音楽を聴きながらバーボンを傾けていた。 「……あの」 「ああ、お帰り」 「服とか」 「乾燥まで出来るから。服、次からは、用意しておくね……」 「いや、良いっすけど……」  一瞬、プレゼント攻撃で貰った服を思い出し、反射的に断ってしまう。いや、それよりパンツをだな。 (っていうか、次か―――)  雨下の言う『次』という言葉に、ゾクンと背筋が震える。一度ではないのだ。この契約は。  ふぅ、と息を吐き、雨下を見る。顔が熱い。緊張に身体が強ばる。  本当に、これじゃまるで、処女を捧げに来た乙女のようだ。 「……じゃあ、行こうか」 「行こうって、どこに―――」  雨下に手を取られ、促される。無駄に広いリビングを抜け、連れられたのは主寝室らしい部屋だった。  中央に位置する大きなベッドに、ビクッと肩を揺らす。雨下が意味ありげな瞳で笑いかけた。 「どうしたの? 神足くん」 「……横向きに寝られるほど広いベッドっすね」  俺の反応を見て、からかっているのだろう。雨下を喜ばせたくないので、なんでもないふりをする。 「広いなら広い方が良いって考えだったんだけど」 「まあ、そうっすね」 「一緒に寝るなら、狭いのもアリな気がしてきたよ」 「……」  嬉しそうに笑う雨下に、真顔になる。反応すればするほど、喜ばせてしまいそうだ。 (この人……、物腰柔らかだし、穏やかなのに……。絶対、ドSだよな……)  脚フェチ変態野郎だと思っていたときは、どちらかと言えばMの方だと思ったのに。騙された気分だ。 「じゃあ、そこに寝そべって」 「え? 寝るの?」 「大丈夫。心配しなくても脚だけだからね」 「まあ、それは……」  ある意味、誰よりも信用できる。雨下は脚にしか興味がない。  恐る恐る、ベッドに上がる。俺はベッドで寝たことが殆どないので、良し悪しは分からないが、良いものなのだろうことはよく分かった。マットレスがゆったりと沈む。 「うわ。寝そう」 「寝ちゃっても良いよ?」 「え? いや……」  それはなんか、不安だ。  雨下はクスクス笑って、サイドボードから何やら瓶を取り出した。既になんだか、良い香りがしている。 「マッサージ、させてね」 「へ」  雨下はそういうと、手にオイルを取り出す。エキゾチックな香りが、部屋に広がった。 「マッサージ……っすか?」 「うん」  雨下は慣れた手付きで、オイルをふくらはぎから膝下の方へと広げ始めた。ゆっくりと、揉むようにしながら丹念にオイルを馴染ませていく。 「っ、ん……」  思わず、吐息が漏れた。 (気持ち、良い……)  雨下の手は、かなり慣れていた。疲れきった脚を、解すように、揉まれていく。 「あんた……女口説くときもこの手でやってるだろ」 「あは。合法に触れるからねえ」 「合法とか言うな、ヘンタイ……っん」  グイと強く揉まれ、思わず声が出る。雨下の指が皮膚を滑り、足首を掴んだ。そのまま、踵を包むようにされ、脚の裏をマッサージされる。 「あっ、はぁっ……、雨下、さっ……」 「気持ち良い?」 「っん……、あんた、マッサージ師、なれますよ……」 「僕も良いと思うんだけどね」  ぐりっと、土踏まずのあたりを押され、びくりと膝が揺れる。普段、立ちっぱなしの仕事ばかりだからか、揉まれると脚が疲れきっているのだと自覚する。 「好きな脚しか、触らないから。それに、うちの秘書に、変態に揉まれたい人居ないですよって言われちゃってねえ」 「それは、まあ……」  秘書にまで言われているのか。この人も、大概オープンな変態だ。隠す気もないのかもしれないが。  雨下の手が、足の指の間に絡み付く。オイルでぬるりとした手が指に絡み付くのが、何故だかドキドキする。  雨下が、獰猛な瞳で、俺を見た。  様子を窺いながら、雨下の顔が静かに近づく。爪先に、唇が触れる。 「っ……、雨下さ……」  おもむろに、雨下の唇がちゅぽんと親指を咥えた。 「ひぅっ……」  思わず悲鳴めいた声を上げてしまい、手で口を覆う。雨下の舌が、足の指を這う。  指の間を愛撫される感触に、ビクリと膝が揺れた。ゾクゾクと、皮膚が粟立つ。  足を、舐められるという行為の、恐ろしい背徳感に、脳が痺れた。  雨下は俺の様子に笑みを浮かべながら、指から唇を離し、そのまま脚の裏を舐めあげる。 「っく、はっ……ん……くすぐった……」  擽られることに弱いほど、足の裏は敏感なのだと、思い知らされる。自分では想像もしていなかったが、考えてみれば足は地面の危険を察知する場所だ。感覚は鋭いのだろう。  明確に愛撫をされ、動揺と興奮に頭がおかしくなりそうだった。 (こんなのっ……、聞いてないっ……)  雨下がすることなど、想像していたのに。その結果がこうなるとは、思っていなかった。  バスローブの下は無防備な姿で、それが余計に興奮を煽る。雨下が触れる度に、僅かに興奮を示す自身が、所在なさげに揺れる。 (これっ……、ヤバいっ……、かも……っ)  唇を噛んで、刺激に耐える。雨下の舌が、足首を這い、徐々に上がってくる。  ちゅ、と膝に吸い付かれ、ビクリと脚を揺らす。バスローブがはだけそうになって、慌てて前を合わせる。 「……ハァ、神足くん……」  雨下が、熱っぽい声で、俺の名を呼んだ。チラリと視線をやった瞬間、雨下の股間の膨らみを見てしまい、慌てて目を逸らす。  興奮、している。  幾つも店を持って、高いマンションに住んで、何でも恣に出来るような男が、俺の脚で。 「―――っ、雨下……」  ほの暗い高揚感に、目眩がする。  雨下の手が、太股を撫でた。 「っ、ちょ……」  際どい部分を撫でられ、逃げ腰になる。それを、雨下が足首を掴んで制する。 「逃げないで。神足くん」 「っ、逃げ、ないけどっ……」 「脚だけ、好きにさせてくれるって。そう言ったでしょ?」 (そうだけど)  ドクドクと、心臓が鳴る。雨下の興奮に当てられて、こっちまで変な気分になる。  怖い。同時に、好奇心が、刺激される。  そもそも、他人との触れ合いに、慣れていない。人肌など、何年も触れていない。  チチ、と小さな音を立て、雨下がスラックスのファスナーを下ろし始めた。ビクリ、肩が揺れる。  既にパンパンに膨れ上がったモノが、勢い良く飛び出した。 「―――」  ゴクリ、喉を鳴らす。  目を背けようとしたのに、身体が動かない。  雨下が脚に、擦り付けるのを、他人事のように見守っている。 「―――ハァ……、ハァ……、神足くん……」  脚を撫でまわしながら、雨下が腰を揺らし、擦りあげる。 「っ……!」  あまりにも、倒錯的で、背徳的な、行為。  雨下の興奮が感染したように、俺に伝播する。俺の性器もまた、隠しようのないほどに、勃起していた。 「綺麗だ……」  恍惚とした表情で、雨下が脚に歯を立てる。 「っ……!」  ヌルヌルしているのは、先走りのせいだろう。擦られ、精液を塗りつけられ、不快なはずなのに、そればかりではなくて。 「雨下っ……!」 「神足くんっ……」  雨下の唇が、踝に吸い付く。同時に、熱いものが、べったりと脚にかけられた。 「っ、ん……!」 「―――くっ……」  低く呻いて、雨下がイく。 「―――」  俺はといえば、目の前で繰り広げられた光景に、放心状態だ。ねっとりと吐き出された精液が、太股からシーツの方へと零れていく。  雨下は俺の脚にしがみついたまま、チュ、チュ、と脚を労わるようにキスを繰り返していた。 「ああ、神足くん……」  雨下が吐息と共に、俺の方を見る。無意識に、バスローブの裾を掴んで、下半身を隠す。勃起しているのを知られるのは、嫌だった。 「ワインをこぼされたあの日ね……」  初めて、雨下が変態だと知った、あの日のことだろう。あの日も俺は、雨下に脚を舐められた。 「ワインまみれの君の脚に、僕の心は奪われたんだ」 「―――は」  なにを言ってるんだ。この変態は。 「あの日から、ずっと―――君の脚に、僕の精液をかけたいと思ってたんだよ」 「―――」  とんでもない発言に、俺は少しだけ―――いや、かなり。  雨下の提案を受けたことを、後悔したのだった。

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