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十五話 変わる世界

 変態脚フェチ野郎の発情が一回で済むはずなく、俺の脚はさらに二回|使われた《、、、、》。 (キスマーク……落ちない……)  シャワーを浴びながら、肌を擦る。脚には、雨下がつけたキスマークや歯形が、生々しく残されていた。  精液を洗い流し、痕跡をなぞりながら、溜め息を吐く。こんなことをして、良かったのだろうかという、うっすらとした罪悪感と、とんでもないことをしているという、高揚感に、胸がざわざわとする。夢だったと思うには生々しく、あまりにも、欲望に満ちた空間だった。 (それに)  おず、と、自分の股間に手を伸ばす。俺自身、興奮していた。あの、異様な行為と、雨下の手に、勃起して―――。 『あっ……! 雨下っ……!』  カァァ、と顔が熱くなる。  雨下が三度もイく間、俺は。  俺は、結局。耐えきれずに、自分で―――。 『神足くん……僕がイくの、見て……。君のも、見せて……』 (うわああああああっっ!!!)  雨下の、熱っぽい顔を、思い出す。  あれから、俺は。  雨下の前で、オナニーしてしまった。互いに、自分がイくのを見せ合うことになってしまい、非常に気まずい。 「くっそ……」  恥ずかしい。あの時の俺は、冷静じゃなかった。あんなことをしてしまうなんて。  どんな顔で、雨下を見ればいいんだろうか。恥ずかしくて、死んでしまいそうだ。  俺は不必要にゴシゴシと身体を擦りながら、パンクしそうな頭をどうにかしようと必死だった。  全て、シャワーとともに、洗い流せれば良かったのに。    ◆   ◆   ◆  シャワーから出ると、洗濯を終えた服が、綺麗に畳まれていた。下着を雨下に畳まれたということに気づいて、また羞恥心がわいてくる。  恥ずかしさを堪えながら衣服を着替え、リビングを恐る恐る覗くと、雨下がスッキリした顔でスパークリングワインを傾けていた。 「ああ。お帰りなさい」 「た、ただいま……?」  返事が正しいかは分からないが、所在なくその場に立っていると、雨下が笑いながら手招きする。ソファの近くに寄ると、雨下が俺の手を引っ張った。  もつれ込むようにソファに倒れ、雨下が受け止める。雨下は俺の肩を引き寄せながら、もう片方の手で太股を撫で上げた。 「っ……」 「泊まっていきなよ。疲れたでしょ?」 「いや、俺は……」  逡巡する俺に、雨下がさわさわと腿を撫でる。先程の感覚が蘇って、ビクンと肩を揺らした。 「雨下さっ……」 「雨下で良いよ。そう、呼んでたでしょ? ―――縁くん」  名前を呼ばれ、鼓膜がぞくんと震える。ワインの華やかな香りが、こっちにまで漂う。 「僕に取り繕わなくていいよ。その方が―――嬉しいし、ね?」 「……」  半ば強引な提案だったが、断る理由もなかった。敢えて不機嫌そうにして、雨下の手を太股から引き剥がす。 「今日はもう、いいだろ」 「残念」  クスクスと笑う声が、鼓膜をくすぐった。なんとなく、雨下の笑う声は、嫌いじゃない。 「まあ、とにかく、泊まっていきなよ。もう少し飲んでもいいし。……そうだ。お腹は空かない? 軽いものなら用意できるけど」 「いや、俺は―――」  と、断ろうとしたところで、空気を読まずに腹の虫が鳴く。それを見て、雨下がクスリと笑った。 「……」  クソ。恥ずかしい 「何か簡単に作るよ。待ってて」 「あ、いや……」 「ほら。ワインでも飲んで」  と、グラスを押し付けられる。先ほどまで雨下が飲んでいたグラスだ。 (……平然としやがって)  内心、少し面白くない。雨下真尋というこの男は、きっと容易く他人の人生を変えることが出来る。そしてそれを、大したことではないように、気づきもしないのだろう。  キッチンで鼻唄を歌う雨下を見ながら、俺は残ったワインを喉へと流し込んだ。  

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