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第5話
「アレルギーなんて聞いてねえぞ⁉︎ やってらんねえよ‼︎」
「いやマジめんどう過ぎるっス‼︎ でもやんなきゃダメっスよアニキ、人質ってのは元気だから価値があるって、昔マンガで読みましたもん」
「でもよぉー!」
「頑張りましょう、一週間後には二千万っス!」
「三千万でも足りねえくらいじゃねぇ?」
「でもとにかくやらなきゃダメっスから!」
「う、ううぅぅ……」
ー6日後ー
「ゼイ……ゼイ……なんとか……今日まで辿りついたぞ……」
青息吐息の二人は、げっそりと痩せた顔を見合わせた。
赤ん坊は少しでも油断するとすぐにアレルギー反応を起こして赤くなり、そうなると痛いのかギャン泣きが止まらない。
夜は夜通し夜泣きされ、耳栓をしたがなんの効果もなかった。
いっそ戦場に放り投げられた方が楽だ……そう思わない日はなかったほどの過酷さを知った。
「明日が支払期限日だ。やり切ったな、ヤス!」
「……っス! 二千万手に入ったら何します? アニキ」
「そうだなぁ、ラスベガスとか行きてえなぁ」
「いいっスね、一緒に行きましょう!」
ワッハハハ! 抱き合っているとスマホが鳴った。
「来たー! ママンからの返信だ!」
わくわくして開くと、メールにはこう書かれていた。
「すみません……あと三日待ってもらえませんか? 今お金を工面しているところなので」
二人はがっくりと肩を落とした。
「嘘だろ……こんな大変なのに、あと三日も⁉︎ いや無理だ。ヤス、こんなガキもうどっかに捨てて……」
アニキが振り返った瞬間。
赤ん坊の顔が、ふいにほころんだ。
「えっ! いっ、今っ……」
「笑っ……たっ、スよね、アニキを見て」
「……マジか……」
「つか、天使だったっスね、今の笑顔」
「……」
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